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2010年2月

2010/02/26

塩田雅紀さん作品展、「大きな古時計」も登場します

2月25日
単行本の装画や人気ミュージシャンのアルバムなどで
独自の世界観を表現するイラストレーター、
塩田雅紀さんの個展が28日(日)から
東京・深川の「アルマスGallery」で開催されます。
柴田元幸さんとのコラボレーションで
数々の英米文学作品の表紙を手掛けている塩田さん。
ポール・オースターの『偶然の音楽』、
あるいはテリー・ケイの『白い犬とワルツを』などは、
表紙が気に入って購入した人も多いのではないでしょうか。
平井堅さんの「大きな古時計」や
スキマスイッチのアルバム三部作
「夏雲ノイズ」「空創 クリップ」「夕風ブレンド」にも
塩田さんの作品が使われています。
個展では塩田さんの多岐にわたる仕事の中から、
装画として描いた原画とその書籍を展示。
NHKみんなのうた「大きな古時計」の
アニメーションも放映予定です。
さらにポストカード、原画のプリント画を
額装したものも販売いたします。
塩田さんからのメッセージによれば
28日(日)の17時から開かれる
オープニングパーティーでは
「イシトキト」さんというところが
ケータリングサービスを担当してますが、
こちらもぜひ楽しみにしてくださいとのことです。

ところで、塩田さんと柴田さんの名コンビ誕生には
僕もちょっとだけお役に立たせてもらったのですが、
そのお話は今日の番組で。

002 003

*塩田さんの絵による表紙です。

♫「アルマスGallery」ホームページ
http://harmas.fabre-design.com/
♫「イシトキト」ホームページ
http://blog.ishitokito.com/

2月26日
東京駅前、丸ビルと新丸ビルをつなぐ
地下通路の広大なスペースを利用した
『行幸地下ギャラリー』では、
明日27日から3月31日まで、
アートイベント「地球に生きる女性たち ティトゥアン・ラマズー展」が
開催されます。
ティトゥアン・ラマズーさんは
1955年モロッコのカサブランカ生まれ。
17歳で国立美術学校に入学したが航海に方向転換し、
数々のヨットレースで優勝しています。
その後世界を旅しながら旅行記などを制作。
さらに世界の女性を描き続けています。
彼の作品は人道的見地から、また芸術的価値からも高く評価され
ユネスコから「平和のためのアーティスト」に任命されました。
明日からの企画展では世界中を旅して出会った
女性たちの素顔を写真、デッサン、映像に残し、
女性の特性の中にある無限の多様性を表現する作品、
約100点が展示されます。
なお、このアートイベントは国連が制定した
「国際女性の日」(3月8日)を中心に約1か月間にわたり、
開催される「Femmes@Tokyo」の一環として行われるものです。

♫「Femmes@Tokyo」ホームページ
http://femmes.exhn.jp/index.html

♪番組では、皆さんからの推薦本を募集しています。
特に、「旅に出たくなる本」「旅先に持っていきたくなる本」
そして「ベットサイド 枕元にいつも置いておきたい本」があったら
皆で情報交換しませんか。
メールアドレスは
moderato@ottava.jp

2010/02/25

ルノワールが描いたワーグナー

現在、国立新美術館で開催されている
『ルノワール 伝統と革新』はもうご覧になりましたか?
「またルノワール? 毎年やっているじゃないか」
「日本人は印象派に弱いよなぁ~」
と敬遠している方が多いかもしれませんね。
実は僕もそんな懐疑的な気持ちを抱きながら
会場へ足を運んだのですが、
これがなかなか素晴らしい内容でした。
美しい女性や可愛らしい子供の絵を眺めているだけで
気持ちが和らいできて
ルノワールが「幸福の画家」と呼ばれている理由が
よく分かったような気がします。

ルノワールの生涯と作品がコンパクトに
まとめられているガイドとしてお勧めなのが
『ルノワール 光と色彩の画家』(賀川恭子=著 角川文庫)。
この本の中にルノワールがワーグナーの
肖像画を描いたときのエピソードが描かれています。

40代を迎えたルノワールは新しい画風を模索するようになり、
旅をする人となりました。
そんななか1882年1月、
パレルモ(シチリア)に滞在していたワーグナーを訪ね、
肖像画を描いたのです。
ワーグナーといえば
当時パリでもっとも人気のあった作曲家の一人。
もちろんルノワールもファンでした。
オペラ『パルジファル』の作曲に没頭していた
ワーグナーがルノワールに与えてくれた時間は僅か30分ほど。
当然、簡単なスケッチしか描けませんでしたが、
それでもフランス語とドイツ語での不思議な会話を楽しむことができました。
ルノワールのスケッチを見たワーグナーは
「私はプロテスタントの牧師みたいだね」と語ったそうです。

ここでワーグナーが自らの顔を牧師に例えたのは、
意味深い発言です。
何故なら、ワーグナーはこの時期
キリスト教本来の姿を見つめ直す、
神聖祝典劇『パルジファル』を
ユダヤ人に指揮させなければいけないという問題に
直面し悩んでいたのでした。
この『パルジファル』問題については番組で詳しく
お話します。

ということで、今日は生誕記念日にちなみ
ルノワールの話を中心にお送りします。

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2010/02/24

歌に生き、柳宗悦を支えた柳兼子の生涯

2月23日
『柳宗悦を支えて 声楽と民藝の母・柳兼子の生涯』
(小池静子=著 現代書館)を読む。
これは民藝運動の提唱者、柳宗悦の妻であり
声楽家(アルト)だった柳兼子の生涯を綴った評伝です。
1892年(明治25年)、東京本所生まれの兼子
(芥川龍之介とは幼稚園の同期)は
明治・大正・昭和にわたって歌い続け、
88歳になってもなおステージに経ち続けた。
さらに兼子はよき家庭人とは言えなかった夫・宗悦を支え、
後に世界的デザイナーになる宗理をはじめ3人の子供を育てている。
日本声楽界の嚆矢といえば兼子より8歳歳上の三浦環が有名ですが、
彼女は音楽のために一度妻の座を放棄しています(後に再婚)。
しかし、兼子は芸術と家庭の両立を目指しました。
民藝運動の資金集めのために演奏会を開き、
子供たちの生活を守るためにレッスンも行います。
ヨーロッパで長く活躍するチャンスにも恵まれましたが
家庭を優先させました。
宗悦は家計に無頓着なだけでなく気難しがり屋であり、
ときには理不尽な怒りを兼子にぶつけます。
女性問題にも悩まされました。
怒りと嫉妬、そして情けなさ。
兼子は死を想うことさえあったそうです。
しかし、兼子を立ち直らせたのは、
やはり音楽への強い想いと
己の信条を曲げない気丈夫さでした。
軍歌を歌うことを拒み、
女性問題にだらしなく、新婚の彼女にも言い寄ってきた
山田耕筰の歌も絶対に歌わなかった兼子。
彼女の生涯は本当に濃密で清廉、そして高貴でした。
でも、もし彼女が音楽のみに生きることを選択していたなら~、
そんな考えも浮かんできました。
それにしてもこの本では柳宗悦がかなり
傲慢、不遜な人物として描かれているのですが、
本当なのだろうか?

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2010/02/23

ヘンデルの『メサイア』、スキャンダルを救う

2月22日
1685年2月23日、ヘンデルが誕生しています。
ヘンデルといえば有名なのがオラトリオ『メサイア』。
この曲が初演された時の“感動的な”エピソードについて、
海野弘さんが興味深い文章を書かれています。
近刊『スキャンダルの世界史』(文藝春秋)の222ページ、
ヘンデルの『メサイア』、スキャンダルを救う
というタイトルから始まる文章の内容を、
簡単に紹介すると次のようになります。

『メサイア』の初演は1742年、ダブリンで行われた。
この公演ではスザンナ・シバという女優がコントラルト(アルト)
を歌ったが、声量は足りないものの、表現力は素晴らしく、
ヘンデルも満足したそう。
シバ夫人が「彼は侮られ」(第二部)を独唱し始めると、
その声と姿に心を奪われた一人の男性がこう叫びます。
「ご婦人、あなたのすべての罪がこの歌で許されますように!」
シバ夫人は3年ほど前に不倫スキャンダルで裁判まで起こし、
悪名高き女性だった。
彼女の犯した罪はその日の観衆も知っていたはずであり、
だからこそ、彼女の歌に感動し、罪が許されるよう願ったのです。
「偉大な音楽は、スキャンダルを浄める」と
海野さんは文章を結んでいます。
そして、シバ夫人の不倫騒動について、
クライ・コンという言葉を引用しながら18世紀の
夫婦関係についても言及していますが、
そのお話は本日の放送で。

『スキャンダルの歴史』は皇帝ネロからクリントン元大統領まで、
古今東西、著名人たちのスキャンダルを網羅した労作。
スキャンダル事典として少しずつ読み続けるにはお勧めです。

2月23日
1455年の今日2月23日、グーテンベルグによる
新約聖書の活版印刷が開始されたと言われています。
羅針盤、火薬とともにルネサンスの三大発明とよばれる
印刷技術の発展は人類の知の発展に大きく貢献しました。
しかし、歴史に名を刻んだグーテンベルグは
研究開発のために全財産を投げ出し、
借金も返済できないまま貧困のうちに生涯を終えたと伝えられています。
ところで、今日、読みにくい漢字などの横に添える
小さな文字をルビと呼びますが、
これが宝石のルビーと関連していることを、
今日初めて知りました。
印刷された活字が貴重なものとされていた時代、
活字の大きさを宝石の名前で呼んだことに由来するそうです。

とここまで書いてからテレビで女子カーリング、
日本対スイスを見始める。
でも素人目にも実力の違いは歴然としていて、
日本はあっけなくギブアップ。
予選突破に危険信号が点ってしまいました。
それにしても、スイスチームのサード、
カルメン・シェファー選手は美しい!

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2010/02/22

『フランダースの犬』から生まれた? ビール

2月22日
週末に「パトラッシュ」という名前の
ベルギービールを見つけました。
名作『フランダースの犬』の物語をモデルにしたビールで、
ラベルにはネロとパトラッシュが描かれています。
でも、この絵があんまり可愛くなくて
ネロ少年が意外と生意気そうに描かれています。
日本とベルギーではずいぶん印象が違うことを実感。
『フランダースの犬』の原作者はイギリス人だし、
この物語もベルギーではそれほど有名でない
という話を聞いたこともあります。

このビールを醸造しているのは
『フランダースの犬』の舞台となった村、
ホーボーケンにあるアレンドという創業1896年のメーカーであり、
何かの周年記念として「パトラッシュ」と「ネロズ・ブロンド」の販売を開始したそう。
「パトラッシュ」は上面発酵のブラウンビール、
アルコール度数8%と飲みごたえ十分な1本です。
お値段少々高めですが、
ラベルが気に入ったら? 話のネタに飲んでみてください。

♫ビールのラベルはこちらで確認できます。
http://www.ikemitsu.com/b0020.html

今日は週末に観た3本の DVDを紹介します。
『ミッドナイト・エクスプレス』
『ヒトラーの贋札』
『わが教え子、ヒトラー』

いずれも歴史的事件を元にした物語。
『善き人のためのソナタ』で強烈な印象を残した、
名優ウルリッヒ・ミューエは
『わが教え子、ヒトラー』が遺作となっています。

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2010/02/19

「バルバンクール」を飲んで、ハイチ復興を願おう

2月18日
ハイチの大地震発生から1カ月以上が経ちました。
復興への道のりは険しく、治安も悪化しているようです。
日本でも多くの団体、個人が義援金活動を行っていますが、
ハイチ産のラム、「バルバンクール」を飲むことで、
少しは役に立てるかもしれない!
という酒飲みには誠にありがたい情報があります。
「バルバンクール」を日本に輸入している武蔵屋さんでは、
「バルバンクール15年」の売上金の10%を
ハイチ復興支援に充てる活動を行っています。
また、都内を中心に募金箱を設置しているバーも何件かあります。
バーへ行って「バルバンクール」を飲むだけでもいいし、
募金箱を見つけたら、酔いの勢いで寄付するのもいい。
あるいは酒屋さんや武蔵屋さんのホームページで
ボトルを購入して家飲みするのもいいでしょう。
ストレート、ロック、ソーダ割、
寒い夜ならホット・ラムも美味しいですよ。

「バルバンクール」はハイチに現存する唯一のラム蒸留所。
ハイチの人々が誇りにするお酒、そして重要な輸出品であります。
少しでも多くの雇用を確保する目的もあり、
サトウキビの収穫は機械に頼らず手作業で行われているのですが、
地震の発生が収穫期に重なっていました。
もしかしたら今後しばらくは入手が難しくなるかもしれません。

さぁ、人助けだと思って今夜もバーへ!

♫武蔵屋さんのホームページはこちら
http://www.musashiya-net.co.jp/

♫募金箱を設置しているバーの紹介はこちら
http://rumjapan.blog34.fc2.com/blog-entry-87.html#bokin

2月19日
久しぶりにお芝居が観たくなり、
ネット検索で見つけたのが
シアタークリエで上演中の「THE 39 STEPS」でした。
これはサスペンスの巨匠、ヒッチコックの映画『三十九夜』を元に、
コメディの要素も加味された作品とのこと。
なんと4人の俳優さんが139役を演じ分けるそうです
(観る側がついてゆけるのだろうかやや心配)。
しかも最近、芝居を見続けている浅野和之さんら芸達者な役者が登場します。
これはきっと面白いはず。
迷わずチケットを購入しました。
東京では、シアタークリエで3月4日までの上演で、その全国を回ります。
残席僅かですが、興味ある方はチェックしてみてください。

♫シアタークリエ
http://www.tohostage.com/39steps/index.html

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2010/02/18

『カルテット』音楽に救われる家族の物語

2月17日
『カルテット』(鬼塚忠=著 河出書房新社)を読む。
崩壊寸前だった家族がカルテット(四重奏)を
組むことで再生に向かって行く姿を描いた小説でした。
主人公は音楽家を目指していた両親の影響で
バイオリンを習い、将来を有望視されている
中学生の永江開。
憧れの先生とのレッスンは愉しいけど、
家に帰れば不協和音が鳴り響いています。
リストラされ就職活動にも身が入らない父。
離婚を考えている母。
反抗的で悪ぶってはいるが実はウブな高校生の姉、美咲。
そんな家族の絆を取り戻すために
開はピアノ、チェロ、フルート、バイオリンによる
カルテットを組んで演奏会を行おうと提案します。
でも演奏はバラバラ、音を奏でるたびに
家族は反目を強め、余計なことまで口にしてしまい……。

予想通りの展開と結末。
そこにやや不満が残ったのは事実ですが、
読後感は極めて爽やか。
あえて分かりやすい内容にした
著者の巧みな小説手法なのかとも思いました。
(安心水戸黄門理論?)
各部屋に1台、テレビやパソコンがあるのも
珍しくない、今の日本の家庭。
だからこそ、家族が向き合って互いの声、音に
耳を傾けることの大切さを教えてもらいました。

表紙のイラストからして
若い読者がマーケットだと思います。
でも、中学生、高校生の子供を持つ、
僕と同世代のお父さん、お母さんにこそ
読んで欲しい、そんな小説です。

鬼塚忠さんはプロの作家、あるいは作家になりたい人を
プロデュースする出版エージェントとして活躍する一方、
自身も小説を執筆。
デビュー作『Little DJ――小さな恋の物語』(ポプラ社)は
ベストセラーとなり映画にもなりました。

ところで、この小説の永江ファミリーを想定したコンサートが
6月に開催されるのですが、
バイオリンとフルート奏者のオーディションが行われます。
詳細はホームページで。
http://quartet2010.blog13.fc2.com/blog-entry-4.html

2月18日
午前中、六本木の21_21デザインサイトで開催されている
「クリストとジャンヌ=クロード展」を観る。
あまりに面白くてついドキュメンタリーDVDを購入してしまった。
ぜひホームページをチェックしてみてください。
http://www.2121designsight.jp/

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2010/02/17

『日経おとなのOFF』今年見られる世界の名画が全部読めます

2月16日
特集タイトルに惹かれ,
雑誌『日経おとなのOFF』を初めて買った。
その特集タイトルは
「今年日本で見られる世界の名画入門」。
今年開催される西洋絵画の美術展のなかから
主だったものを紹介しつつ、
絵画の鑑賞法や歴史、
あるいは画家とモデルの関係など、
さまざまな切り口で、
美術館に足を運びたくなるページが続いています。
これ1冊あれば1年は重宝する特集企画だと思います。
参考までに今年開催される美術展のなかから、
僕が絶対に訪れたいと思ったものを記しておきます。

●「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」
~3月14日(東京都庭園美術館展)
●「ボルゲーゼ美術館展」
~4月4日(東京都美術館)
●「ルノワール 伝統と革新」
~4月5日(国立新美術館) 
4月17日~6月27日(大阪国立国際美術館)
●「美しき挑発レンピッカ展」
3月6日~5月9日(文化村ザ・ミュージアム)
●「マネとモダン・パリ」
4月6日~7月25日(三菱一号館美術館)
●「モーリス・ユトリロ展」
4月17日~7月4日(東郷青児美術館)
●「オルセー美術館展2010 ポスト印象派」
5月26日~8月16日(国立新美術館)
●「ドガ展」
9月18日~12月31日(横浜美術館)
●「没後120年ゴッホ展」
10月1日~12月20日(国立新美術館)
●「モネとジヴェルニーの画家たち」
12月7日~2月17日(文化村ザ・ミュージアム)

2月17日
ショパンイヤーということで、
今年は彼の名曲を堪能できるリサイタルが
たくさん予定されています。
僕もいくつか足を運んでみおうと思っていますが、
今日、小山実稚恵さんの演奏会チケットを購入。
3月20日(土)に川口リリアで開催されます。
もちろん全曲ショパン。
ご興味ある方はホームページでチェックしてみてください。
http://www.lilia.or.jp/event/2010/20100320/index.html

2010/02/16

『ローマで語る』『善き人のためのソナタ』

2月15日
週末に読んだもう1冊の本が
塩野七生さんの新刊『ローマで語る』
(集英社インターナショナル)でした。
「書物と映画は同格」と教えられて
育ってきた塩野さんが、
息子であるアントニオ・シモーネさんと語り合った、
映画論、そして日本、イタリア、アメリカの文化論です。
ヴィスコンティ、ロッセリーニなどの
イタリア映画はもちろんですが、
ハリウッドの娯楽大作や
エミネム、ウィル・スミスなどの出演作をも
塩野さんがチェックしているのには驚かされました。
ちなみに塩野さんが一番熱く語っていた映画は
『カポーティ』。
そして関連作品として『アラバマ物語』と
『名探偵登場』を推薦していますが、
『名探偵登場』にはカポーティ自身が出演しているそうで、
これはチェックしなければと思いました。

この本に触発され週末に観たのが『善き人のためのソナタ』。
こんなに素晴らしい映画を何故劇場で観なかったのか、
と後悔させられた感動的な作品でした。
映画の中で登場人物の劇作家がレーニンの言葉を引用しながら、
次のように発言します。
「ベートーヴェンの熱情ソナタを聴くと革命が達成できない。
この曲を本気で聴いた者は悪人になれない」

少し調べてみるとレーニンは
ベートーヴェンをこよなく愛していました。
特に熱情を毎日のように聴き、
「人間はこういう奇跡を行うことができるんだ」
と語ったそうです。
甘美な音楽に浸っていると志をつい忘れてしまう、
という自戒の念を込めて映画のような発言を
したのかもしれません。
レーニンのベートーヴェン好きを描いた
1963年の『アパショナータ』という映画があるそうですが、
現在、観賞するのはやや困難のよう。
ちなみにこのデビュー作『善き人のためのソナタ』で
一躍脚光を浴びた監督は
ベートーヴェンを聴いているときに
映画のアイディアを思いついたそうです。

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2010/02/15

『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』『静かなる男』

2月15日
週末の午後、以前リスナーの方から勧めてもらった
村上春樹さんの『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』(新潮文庫)を読む。
シングル・モルト・ウィスキーを求めてアイラ島の蒸留所を訪ね、
アイルランドではパブを渡り歩いた
村上さん夫妻のウィスキー紀行文です。
リスナーの方はこんなコメントと共に推薦してくれました。
「村上春樹さんの のびのびした言葉にももちろん
同行された春樹夫人撮影のあたたかみのある写真に
視覚的にも刺激されて(中略)
目を閉じると アイラ島の
遠くに聴こえる波の音や 潮風も感じられるでしょうか…」

確かに僕も,お酒の専門家による蒸留所紹介とは
まったく趣を異にした村上さんならではの
文章表現に酔わされました。
例えば、地元の人の次のような言葉です。
「うまいアイラのシングル・モルトがそこにあるのに、
どうしてわざわざブレンディッド・ウィスキーなんてものを飲まなくちゃいけない?
それは天使が空から降りてきて美しい音楽を奏でようとしているときに

テレビの再放送番組をつけるようなものじゃないか」(33ページ)
モルト好きの方なら思わず納得の文章ではありませんか?

その他にも音楽好きな村上さんならではの文章が随所にあります。
ウィスキーの個性を、
グレン・グールドとピーター・ゼルキンによる
「ゴルトベルグ変奏曲」の音色の違いで表した表現。
生牡蠣とアイラ・ウィスキーとの相性を
伝説のトリスタンとイゾルデに例えた表現。
ボウモアをゆっくり味わうときのコツを
シューベルトの長い室内楽を例に語った文章もあります。
確かに、弦楽五重奏曲などを聴きながら
一人でモルト・ウィスキーをゆっくり飲む時間を
もてたのなら、それだけで大抵の嫌なことは忘れ去り、
心穏やかな人になれそうな気がします。
(ただし、我が家はウィスキー禁止。
コーヒーリキュールのミルク割を飲みながら
ウィスキーについて書かれた文章を読むのは辛い)。
普段、ウィスキーを飲まない方でもこの本を読めば、
村上さんが紹介してくれたボトルを味わってみたくなるのではないでしょうか。
もちろん、スコットランドやアイルランドにも行きたくなります。

ところでこの本のなかで村上さんは
「すごくいやなことがあると」いつも観る映画として
『静かなる男』を紹介しています。
ジョン・フォードとジョン・ウェインの名コンビによる
アイルランドを舞台にした、
かなり「前向き」なヒューマンドラマです。
今日はこの映画について、
そしてアイルランド出身で夜想曲(ノクターン)の生みの親、
ジョン・フィールドについてもお話します。
オンデマンドで聴く方はアイリッシュウィスキー、
あるいはギネス・ビール、
ベイリーズ(アイルランド生まれのリキュール)など
飲みながら聴いてみてください。

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2010/02/12

これぞ本当の『プラダを着た悪魔?!』

2月12日
今年のミラノコレクションは何だか不穏な空気に包まれそう。
その理由は日本とイタリアの文化交流サロン、
「アッティコ」代表でローマ在住の村本幸枝さんから、
今朝届いたメールを読んでください。
以下、『これぞ本当のプラダを着た悪魔?!』と題された
メールを添付します。

昨日、ミラノコレクション・ドンナのスケジュールが発表されました。
当初予定していた7日間が6日間と1日減って
2月24日からから3月1日に決定。
ことの発端は、モード界の女王、アナ・ウインターが、
「7日間なんて長過ぎるわ。
アメリカのジャーナリストたちはそんなに
長くミラノに滞在できないわよ。
もっと短くしてちょうだい」と、
ミラノ・モード協会に詰め寄ったこと。
アナ・ウインターは、ご存知、米国版『ヴォーグ』の敏腕編集長。
映画『プラダを着た悪魔』でメリル・ストリープ演じるミランダ役の
モデルになったとも言われる、
超やり手でファッション業界の人々が恐れをなす人物だとか。
(ご本人を知らないので噂から)
さらに「私は26日から28日の3日間しかミラノに滞在しないから」』と
発表したから、さあ大変!
その3日間以外にショーを予定していたデザイナーたちが、
慌ててプログラムを変更しようと四苦八苦。
とは言え、すでに会場を押さえ、設営の手配をし、
モデルやヘアメイクを発注済みのプログラムを変更するのはほぼ不可能。
日程が1日減っただけでも、関係者たちは大変な思いをしたようです。
結局、プラダ、フェンディは25日、
クリツィアは当初の予定どおり同じく25日、
ラウラ・ビアジョッティは1日にと、
アナ・ウインターの不在日にショーを行うようです。

一方、同じリクエストを受けたパリコレ側は彼女を完全無視。
当初の予定を全く変更することなく、
コレクション発表をするそうです。
それを聞いたイタリア人の友人は、
『ほんと、イタリア人は長いものに巻かれ、
強いものにくっついていく民族なのよねぇ。
フランス人は大っ嫌いだけど、
彼らのそういう不屈な精神は認めざるを得ないわね』とため息。
                          アッティコ・ローマ 村本幸枝

僕もミラノコレクションを観に行ったことはありますが、
メンズなので比較的のんびりとしたムードでした。
でもレディスの会場はかなり緊張感が漂うそうです。
着席順を間違えただけで、首になったプレスがいる
などという怖い噂を耳にしたこともあります。
それにしても僕の頃は日本からの取材陣は
かなりよい待遇を受けていたけど、
今では中国からの取材陣にとって代わられているのでしょうか?

♫語学教室、料理教室などイベント情報盛りだくさんの
アッティコホームページはこちらです。
http://www.attico.net

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2010/02/11

『さよならドビュッシー』というより『それはないよドビュッシー』

2月10日
『さよならドビュッシー』(中山七里=著 宝島社)を読む。
今年度の「このミステリーがすごい!」大賞受賞作だし、
職業柄、読んでおくべきかなぁ~と思った次第。

ピアノを習う16歳の少女が火事で全身大怪我を追うが、
奇蹟的に一命を取りとめる。
辛いリハビリに耐え、
天才新進ピアニストの厳しいレッスンを受けて、
コンクール優勝を目指す悲劇のヒロイン。
しかしそんな彼女にさらなる不幸が追い打ちを掛け……。
というのが基本的なストーリーでした。
全てお見通しの天才ピアニスト。
彼を崇拝して必死に努力し、才能を開花させていく少女。
この師弟関係は千秋とのだめ、あるいは宗方仁と岡ひろみ。
つまり、『のだめ』+『エースをねらえ』なんですね。
小説全体の流れも極めて少女漫画的であり、
ちょっと(僕的には)あり得ない展開の連続です。

ヒロインがコンクールで弾くのが
ショパンのエチュード、
そしてドビュッシーの「月の光」と「アラベスク第1番」。
このシーンの描写はかなり細かかったけど、
ピアノも弾けないし、楽譜も読めない僕には
いまひとつリアリティが感じられませんでした。
演奏家の方なら、また違う感想を抱くのかもしれません。

ミステリーとしてはどうなのかといえば、
細部の詰めが甘いような気がするし、
ラストはあまりにも古典的。

芥川賞も直木賞も
作った菊池寛自身が
「雑誌(文藝春秋)を売るための宣伝!」と
公言した事実を思い出しました。

2月11日
今日は休日。
家でのんびりしている方も多いのではないでしょうか。
かなり寒くて、外出するのも億劫ですよね。
こんな日に暖かい部屋で昼間から飲むビールがまた美味しい。
そう思っている方に朗報?。
ビールは骨を強くする! 
というニュースを発見しました。
これはロイター通信のサイトで読んだもの。
その記事によればカリフォルニア大学の研究チームは、
ビールにシリコンが多く含まれ、
骨を強く保ち骨粗しょう病を予防する可能性があるという
研究結果を発表したそうです。 
研究チームは、市販のビール100種類のシリコン含有量を調べ、
ビールのタイプや原料によってデータを分類。
その結果、ビール1リットル当たりに含まれるシリコンの量は
6.4ミリグラムから56.5ミリグラムと幅があり、
最もシリコンの含有量が高いのはペールエールであるとのこと。
ただしこの研究では骨密度や臨床データを調べた訳ではないため、
あまり真剣に受け止めるべきではないとも付け加えています。
あくまで酒飲みの自己弁護、ということでしょうか。

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2010/02/10

プーシキンの哀しき決闘

2月10日
今日はロシアの文豪、
アレクサンドル・プーシキンの命日。
ヨーロッパ文学の模倣にすぎなかったロシア文学を
国民的な文学に高め、
ロシア近代文学の父と呼ばれているプーシキン。
1837年の2月10日(新暦)に37歳という若さで亡くなった
彼の最後は哀れなものでした。
美貌で知れらる妻に言い寄ったバイセクシャルな男に
決闘を申し込み、銃弾をあびて2日間苦しんだ果てに
息を引き取ったのです。
彼の命を奪ったフランスからの亡命貴族は
その後母国に戻り、
政治家という名誉職に就いています。
決闘の原因となった妻はエリート軍人と再婚し、
幸せな人生を送っている。
とまぁ、ここまでが一般的に知られていること。
しかし、この決闘は体制批判を続けていた自由主義者プーシキンを
抹殺するための罠だったという説があります。
当時その事実を糾弾したのが
プーシキンの後継者とみなされていたレールモントフという作家
だったのですが、彼もその後“決闘”で命を落とした、
という事実は何を物語っているのでしょうか。
ちなみにプーシキンの妻は、
再婚する前、時の最高権力者たる皇帝ニコライ1世の愛人だった、
という噂が流布されていたそうです。
なお、この事件に関しては中野京子さんが
『危険な世界史』(角川書店)のなかで書いているので、
ぜひご一読ください。
今日はプーシキンの言葉から生まれた
名曲をいくつかオンエアする予定です。

そういえば、ヘンデルも決闘で
命を落としかけましたね。

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2010/02/09

シェリーとイベリコハムでアルベニスに乾杯!

2月8日
1909年の2月9日、
イサーク・アルベニス(1860~1909年)の、
組曲「イベリア」の最後、第4巻が、
パリの国民音楽協会で初演されています。
アルベニスの最高傑作に数えられ、
近代音楽の世界でも最高峰のひとつとして位置づけされている
この曲はドビュッシーやメシアンからも称賛されました。
30代の後半になると体力的な衰えもあり
作曲活動が滞っていたアルベニスは
1900年には腎臓病を患いました。
本人も「もう長くは生きられない」と悟り、
ニースで静養していたのですが、
そんななか最後の気力を振り絞って完成させたのが、
「イベリア」の第4巻3曲だったのです。
異国で病の床につきながら
母国スペインへの想い綴ったこの曲を
ファリャはこう評しました。
「この曲は消えゆく世界への最後の眼差しであり、
死を目前にして思い出した、かすんでゆく香りである」。
この初演の日から3ヵ月後の5月18日に
アルベニスは他界します。
まさに“白鳥の歌”だったのですね。

ところで第4巻の2曲目には
「ヘレス」というタイトルが付いています。
ヘレスとはフラメンコ発祥の地と言われている、
スペイン南部アンダルシア地方の街。
この街、および周辺で作られる酒精強化ワイン
だけがシェリーと呼ばれています。
スペイン語でシェリーはビノ・デ・ヘレス。
この地が昔、シェリシェと呼ばれていて、
それが英語に変化して
シェリーと言われるようになったそうです。
アルベニスも元気な頃はシェリーのグラスを片手に
ピアノを弾いたのでしょうか?
今夜はシェリーとイベリコ豚の生ハムで
大作曲家を偲ぶのもいいですね。

2月9日
新宿のワコウ・ワークス・オブ・アートで開催されている
ゲルハルト・リヒターの個展を観てきました。
1932年の2月9日には、
旧東ドイツのドレスデンで生まれたリヒターは
現代アートの巨匠。
今回の展示では、彼の作品の原型ともいえる
写真の上に油彩やエナメルで描くオーバーペンティッドフォトグラフを
中心に、新作が30点展示されていた。

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2010/02/08

フルートを聴いていた週末

2月6日
小説『食堂かたつむり』
(小川糸=著 ポプラ文庫)を読む。
40代の僕には辛い小説だった。
映画を観に行くか否か迷うところ。

2月7日
フルート奏者、有田正広さんのリサイタルを聴くために
新所沢にある松明堂ホールまで出かけた。
バロックからドビュッシー、ラヴェルの時代まで、
その曲が生まれた時代のフルート8本を使い分け、
丁寧な説明とともに演奏してくれたので、
フルートの歴史がよく理解できて勉強になった。
有田さんによればフルートの名曲が多く生まれたのは
やはりバロック時代であり、
その後、フルートが楽器として発展するにつれ、
演奏技術にひけらかすための、
曲芸のような曲が増えてきたという。
「19世紀に美しいフルート曲を残したのは
シューベルトだけ」
という有田さんの言葉が印象的だった。
そういえば、心理学者の河合隼雄さんも
晩年、フルートを真剣に学び、
作家、辺見庸さんもフルートを趣味にしている。
何か楽器を覚えたいと思ったとき、
フルートは習いやすい楽器なのかもしれない。
週末はフルートを吹く。
そんな人生も悪くないな、と少しだけ思った。

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2010/02/05

インディア・ペールエールを初めて飲んだ

2月4日
昨夜は衝撃的なビールとの出会いがありました。
そのビールに出会った店は、
六本木、テレ朝通りにある『アウグスビアクラブ』。
無ろ過プレミアムビールブランド、
アウグスビールが飲めるレストランです。
アウグスビールは日本の熟練醸造家たちが、
本当に美味しい一杯を求めて作りだしたビール。
ドイツを中心としたヨーロッパ原産の大麦麦芽と
チェコのアロマホップ、
福島県磐梯山系の天然水で育まれています。

ピルスナータイプの「アウグス」、
ラガータイプの「マデューロ」と
どちらも本当に美味しかったのですが、
3杯目に飲んだ「IPA」というビールの
香りと味は、まさに衝撃的でした。
グラスを近づけた瞬間、鼻を刺激する
“湿った草”のような香り
(ソムリエ的に表現するなら“牛のおしっこ”)。
口の中で広がる苦味と柑橘系の甘味。
いわゆる、のど越しスッキリ系のビールとは
正反対の印象なのです。
初めこそやや戸惑いながら飲んでいたのですが、
だんだんとその味と香りに馴染んできて、
このビールが醸し出す“優雅な重厚さ”に
引き込まれていいきました。
そして飲みながら
20年ほど前にアイレイモルトの
ラフロイグに出会ったときの感覚を思い出す。
あのときも初めは顔が歪むほど違和感を覚えたけど、
今では一番好きなウイスキーのひとつになっている。

「IPA」というのは
「インディア・ペールエール(India Pale Ale)」の略称。
大航海時代にイギリスからインドに
輸出されていたビールを起源とします。
当時、イギリス~インド間は過酷な気候条件での
半年近い航海が必要でした。
そこで、雑菌の繁殖を抑えて保存力を高めるため、
通常のペールエールよりも麦芽を多く使用して(1.5倍)
アルコール度数を高め、
バクテリアの繁殖を抑えるホップを大量に加えた(4倍)ビールが、
インド帝国向けに造られるようになりました。
それが非常に苦く、しかしコクのあるビールとなり、
現在も海外では多くのビールファンに支持されているそう。

「ビールをちびちび飲む男は信用しない」
そんな意味のことをロバート・B・パーカーは
スペンサー探偵に言わせていた(ような気がする)。
僕も基本的には同意見だけど、
「IPA」だけはゆっくり、味わいながらチビチビ飲みたい。

ところで、『アウグスビアクラブ』は11時から営業。
「IPA」を1、2杯飲んでからスタジオ入りすることも可能、
ということに時間的にはなります。
まさかねぇ~。

?『アウグスビアクラブ』のホームページはこちら。
http://www.augustbeerclub.jp/

?アウグスビールについてはこちらのアドレスで
http://www.augustbeer.com/

間もなく終了するアートイベント情報です。
?『木村伊兵衛とアンリ・カルティエ・ブレッソン』
東京都写真美術館 ~2月7日(日)

?『土門拳写真展』
東京工芸大学写大ギャラリー ~2月6日(土)

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2010/02/04

『木田安彦の世界』

2月4日
今日は新橋のパナソニック電工汐留ミュージアムで開催されている
『木田安彦の世界』についてお話しようと思います。
僕はまったく知らなかったのですが、
木田安彦さんは“現代の北斎”“日本のピカソ”とも呼ばれ、
作品が大英博物館に収蔵されているほどの
“凄い”芸術家だったのです。
版画をはじめガラス絵、板絵などの絵画作品から
ポスター、カレンダーに至るまで
幅広いフィールドで活躍されている木田さん。
今回展示されているのは
木版画「西国三十三ヵ所」とガラス絵「日本の名刹」という
2つのシリーズでした。
西国三十三所とは、近畿地方を中心に点在する
33か所の観音霊場の総称のこと。
観音菩薩が人々を救うとき、33の姿に変化するという信仰に由来し、
その全てを巡礼参拝すると、
現世で犯したあらゆる罪業が消滅し、極楽往生できるとされています。

木田さんが木版画作品の集大成とするために
「西国三十三ヵ所」の制作を決意したのは還暦を迎えた2004年。
観音霊場を表現するために必要なのは知識、経験、技術、
そして何よりも体力。
その全てが兼ね備わっていなければならないことを考慮すると、
60歳が「いま、そのとき」だったと言います。
しかし、木田さんは2000年頃から右眼を患い、
視力の低下に悩まされました。
「眼が悪くなってきてから、余計にシビアにモノが見えるようになってきた」と
語る木田さんですが、
画家が光を失うかもしれないという恐怖は想像を超えるものがある。
聴力を失いかけたベートーヴェンは自殺まで考えた。
さらに制作に取り掛かると重労働のためか全身に痛みを感じるようになり、
2週間ごとに神経ブロックの注射を打ちながら、刀を入れ続けた。
癌の手術も受け、1カ月以上入院したこともある。
才能のある人が覚悟を決め、
まさに命を削るような想いで完成させた
「西国三十三ヵ所」の木版画。
その作品が人を感動させないはずはない。
その魅力の一端でも、今日伝えられればいいと思う。

♫展覧会の詳細は次のサイトで確認できます。
http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/10/100116/index.html

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2010/02/03

ショパンとメンデルスゾーンの友情?

2月2日
1809年2月3日はメンデルスゾーンの誕生日。
ショパンは今年が生誕200年なので、1810年生まれ。
メンデルスゾーンより1歳下ということになります。
でもショパンの妹イザベラは
「兄は1809年3月1日に生まれた」と証言したことがあり、
この数字に従った方が都合の良い時事もいくつかあるそうです。
ともかくショパンの生誕記念日には謎が多いんですね。
いずれにせいよ、メンデルスゾーンとショパンには
“生まれた日が近い”という以外にもいくつか共通点がある
ような気がします。
2人ともに神童から天才になり、
洗練されていて女性にもてた。
メンデルスゾーンは38歳、
ショパンは39歳か40歳(1949年)という若さで死ね。
メンデルスゾーンはユダヤ人いう人種の壁に悩まされ、
ショパンには祖国ポーランドの独立を妨げる壁が立ちはだかりました。

2人が知り合うのはショパンがパリに着いて間もなくのこと。
その後も友達付き合いは続き、
1835年の夏、メンデルスゾーンはショパンを
シューマンとクララ夫妻に紹介しています。
これがショパンとシューマンの初めての出会い。
このときまだ16歳だったクララが
ショパンのエチュードを弾き、
ショパンやメンデルスゾーンを驚かせた、
というエピソードも残っています。

今日はショパンとメンデルスゾーンの
友情(?)について少しお話します。
ショパンがメンデルスゾーン婦人に
プレゼントした曲もオン・エアする予定です。

2月3日
新橋のパナソニック電工汐留ミュージアムで開催されている
『木田安彦の世界』を観てきました。
これ、凄いです!
圧倒されて、引き込まれます。
絶対にお勧め。
詳しくは明日トークします。
ところで“しおどめ”って何故パソコンで漢字変換
してくれないのでしょうか?

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2010/02/02

『ソーネチカ』平凡な人生への優しい眼差し

2月1日
3時間ほどかけて『ソーネチカ』
(リュドミラ・ウリツカヤ=著 沼野恭子=訳 新潮社)を読み終える。
昨日紹介した『通訳ダニエル・シュタイン』と同じ作者が、
1992年に発表し、国際的な評価を得た初期の作品です。
壮大で登場人物も多い『通訳~』に比べ
『ソーネチカ』は130ページほどの中編、
主要な登場人物も4人と比較的読みやすかったです。

主人公のソーネチカはユダヤ系ロシア人。
容貌もぱっとせず、口数も少ない彼女は幼い頃から本の虫で、
読みだすと小説と現実の区別もつかなくなるような女の子です。
十代に恋をした経験もあったが、それは残酷な結果に終わっている。
そんな彼女の前にフランスから帰国した
反体制的な芸術家ロベルトが現れ、彼女の人生は動き出します。
ロベルトは一目で彼女が自分の妻となるべき人だと悟り、
デートもしていないのに結婚を申し込みました。
2人は結婚し苦楽をともにしながら一人娘を育てていきます。
生活は楽ではないが、夫と一緒に暮らせるという安心感。
一人娘が学校嫌いになったり、夫が浮気したり、
家の立ち退きなど、
(どんな家庭にも起こるような)多少の事件はあっても
ソーネチカの日常、そして人生は概ね平凡で淡々と流れていくのです。
そんな“ありふれた人生”なんて文学の題材には成り得ない!
そう考える人も多いと思う。
だが、作者はそんなソーネチカの常に前向きな生きざまを、
愛情を込めて描いています。
そこに“日常を描けない者に歴史は語れない”という
作者の思いを感じることもできるし、
ソーネチカとダニエル・シュタインの2人に向けた
作者の眼差しに同じ思いを感じることもできる。
そして“ありふれた人生”を見事に描き切った
作者の筆力は、やがて『通訳ダニエル・シュタイン』という
“壮大な歴史の物語”を生み出した。
そんな気がします。

2月2日
今日はショパンのマズルカを多めにオンエアします。
生涯に50曲以上のマズルカを生み出したショパン。
20歳のときに旅立って以来、再び帰ることができなかった
祖国ポーランドへの望郷の想いがそうさせたのでしょうか。

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2010/02/01

『通訳ダニエル・シュタイン』

1月30日
『通訳ダニエル・シュタイン』
(リュドミラ・ウリツカヤ=著 前田和泉=訳 新潮社 上下巻)を
やっと読み終えた。
近年読んだ小説のなかでは間違いなくベストワンの物語だと思う。
その一方では僕ら日本人には理解しづらい、
歴史的、人種的、宗教的な対立をベースにしている小説なので、
いまひとつ小説のなかに入り込んでいけないもどかしさ、いらだちを
感じたのも事実。登場人物たちの名前も覚えにくい。

この小説は実在した一人の神父をモデルとしている。
オスヴァルト・ルフェイセン(1922~98年)。
ユダヤ系ポーランド人であった彼は、
第二次世界大戦中ゲシュタポの通訳となり、
ゲットーのユダヤ人300人を脱走させた。
戦後はカトリックの神父となってイスラエルで暮らし、
さまざまな民族、宗教に生きる人々を繋ぐ、
あるいは神と彼らを繋ぐ、「通訳」として生きた人だ。
これほど劇的な人物を描くなら
ノンフィクションという手法を用いても十分に面白くなっただろう。
実際、アメリカで出版されたこの神父の評伝の
ロシア語への翻訳を依頼された著者が、
その評伝に物足りなさを感じたことが小説執筆のきっかけになったという。
著者も最初はノンフィクションという手法を選んだ。
しかし、この手法ではダニエル神父の実像を伝えきることが難しいと
判断した著者は、非常に実験的な手法に挑む。
神父と関わりある人々の書いた往復書簡、日記、報告書などを
モンタージュのようにつなげていき、補足説明的な地の文章は
いっさい付け加えずに壮大な物語を完成させたのだ。
そしてその手法はフィクションの可能性を
改めて提示した見事な作品となった。

昨年、プロモーションのため著者は来日し、
いくつかの媒体でインタビューに応じている。
そのなかに、
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のもつ攻撃性を憂い、
穏やかな仏教から学ぶことが多いのではないか、
というコメントがあった。
多少のリップサービスはあると思うが、
ユダヤ系ロシア人であり、若い頃キリスト教に改宗した著者が
仏教に魅了されているという事実は真摯に受け止めるべき。

小説のなかでダニエル神父はイスラエル、パレスチナが共存する
「共同国家」に触れている。
叶わぬことだが、エドワード・サイードがこの小説を読んだら、
どんなコメントをするのか気になった。

『通訳ダニエル・シュタイン』
年内に再読しようと思う。

1月31日
ベランダの色が寂しくなっていたので、
冬に強い花を購入。
赤と緑。どちらもエリカの一種。
水さえまめに与えておけば長いこと花を楽しめるという。
ところで、以前訪れた園芸ショップの人が言っていたけど、
エリカって遠目で見ると可愛らしいけど、
近くでよく見ると、意外とグロテスクなんですよね。
エリカ。最近聞かないなぁ。

P2010396

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清水清

 テニス専門誌や幻の名雑誌といわれた『バッカス』の編集を経て、『エスクァイア』日本版編集部に。4年間を副編集長、5年間を編集長として在籍し、イタリアのスローフードやバリ、日本のBAR、沖縄、アートなど自分の趣味をそのまま誌面に反映させた特集に従事する。 『エスクァイア』退職後、4ヶ月間の石垣島生活を経て、現在に至る。座右の銘は「漂えど沈まず」。

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