現在発売中の雑誌、『TRANSIT 』は南米特集。「美しきアンデス越えて」といタイトルのもと、ペルー、ボリビア、アクアドル、チリ、コロンビアなどなど、普段はあまり知る機会のない遠い国々の魅力を美しい写真とレポートで紹介しています。(たぶん)若い取材陣中心の誌面のなか、2ページですが大御所カメラマン、野町和嘉さんが写真とレポートを寄せていて、これが面白い!。タイトルは「メノナイト、自由への旅」。
メノナイトとは宗教改革の中で生まれた教派のひとつ。再洗礼派とも呼ばれ、親が強制的に授ける乳児洗礼を批判し、洗礼とは成人した本人が聖書の教義を理解したうえで、自らの意思で行うべきものであると主張し、実践しています。また、彼らは宗教と政治の完全な分離を主張し、人と争うことを拒む絶対平和主義を唱えています。そのため兵役に就くことを頑なに拒否しています。このように厳格な教義を掲げ実践しているが故、メノナイトは他の宗派や国家から迫害、弾圧を受け続けてきました。
元々はスイスやドイツからバルト海沿岸にかけて拡がっていったメノナイトですが、流転を繰り返し、メキシコやカナダに逃れました。さらに一部の人々は南米大陸に安息の地を求めたのです。ボリビアだけでも約35,000人のメノナイトが暮らしているのですが、野町さんがレポートしているのはボリビア第二の都市、サンタクルス郊外に暮らすメノナイトの表情。文明と一線を引き、周囲との接触を極力避けて暮らす彼らの生活はIT社会に漬かりきって、思考回路が錆付いてしまった僕らには、想像しがたいものでした。まず彼らは公の教育機関を否定し、ドイツ語のみによる独自の教育を自分たちで行っています。しかも男子は7年間、女子は6年間の小学校教育のみで終了。商売などで町へ出てボリビア人との話す機会のある男性はともかく、家に閉じこもったままの女性たちはスペイン語をまったく話せないそうです。
また、彼らは電力の使用を認めていません。テレビ、ラジオ、電話はもちろんカメラも自動車もダメで、移動手段は馬車。ただし、なぜかプロパンガスは使ってもよいのでガス冷蔵庫はもっている。酒、タバコ、そして音楽鑑賞も禁じられていて、さらに人と争うことが認められていないのでスポーツも禁止です。
彼らメノナイトの表情をとらえた野町さんの写真が何枚か掲載されていますが、本当に南米大陸に暮らす人々なのかと疑うほど、見事に北ヨーロッパ系の顔立ち。白い肌、青い目、そして金髪なんですね。メノナイトは他の人種とは結婚しないため、昔ながらの民族の外見的特長が守られているとのことです。
このように閉鎖的とも思えるメノナイトをボリビア政府が受け入れたのは、よく働く農民として定評のある彼らに農業開発を託そうとしたから。実際、彼らは土地のボリビア人たちよりよく働き、質素ではあるが豊かに暮らしているそうです。
そんなメノナイトにとって現在の悩みの種は、ボリビア人たちによる強盗事件。防衛のための自警団を組織することは彼らの信条に反するため、襲われたら逃げるしかないのです。
なお、メノナイトに興味を持たれた方、マグナムの写真家であるラリー・タウェルがカナダやメキシコに暮らすメノナイトの暮らしを追った素敵な写真集がありますので、機会があったらぜひチェックしてください。