ワインラベルであわや国際問題? ムートン・ロスシルド
ワイン好きな方にとって、ボルドーの五大シャトーのひとつ“シャトー・ムートン・ロスシルド”は憧れのラベルですよね。優れた品質のみならず、ラベルが毎年異なる画家、アーティストによって描かれていることでも知られているロスシルド。この伝統は、1945年以降続いており、ピカソ、シャガール、ミロのような大画家のほか、イギリスのチャールズ皇太子が風景画を描くなど、バラエティに富む人選が魅力です。
そんな、ムートンのワインラベルアートを紹介する特別展「ムートン・ロスシルド ワインラベル原画展」が3月1日から、3月30日まで六本木ヒルズの森美術館で開催されます。
ムートン・ロスシルドのラベルに初めて絵が描かれたのは1924年のこと。創業者ナタリエの曾孫(ひまご)、フィリップが考案しました。彼は自分のシャトーで作られたワインは、全て自分のシャトーで瓶詰めまで行うという方法を取り入れたことでも知られています。これ、今では当たり前のようになっていることですが、当時はワインの瓶詰めはネゴシアンと呼ばれる別の業者がやっていたのです。そしてフィリップはこの年1924年のラベルを、ポスターデザイナーのジャン・カルリュに依頼し、ムートン・ロスシルドが特別なワイン、独創的なワインであることがひと目でわかるようにしたのです。
戦争による中断の後、1945年からワイン作りが再開されると、ムートンのラベルは毎年異なるコンテンポラリーアーティストに依頼されることになり、ボトルは、やがてワインとアートの融合のシンボルとなりました。
ところで、大御所バルテュスも1993年に絵を描いていますが、その絵はバルテュスらしい少女の裸体像、ヌードのデッサンでした。しかし、この絵に対して当時深刻な幼児虐待問題を抱えていたアメリカからクレームが発生、輸入禁止の処置も取られる可能性があったため、アメリカ輸出用に何も描かれていない真っ白のラベルを急遽用意し、輸出にこぎつけたエピソードもあります。
なお、ラベルを描いたギャラは、金銭では支払われません。代わりに、本人の作品が貼られたヴィンテージも含めて数ケースのムートンを贈られるのが慣習だそうです。
清水清