フランス人は個人主義だとよく言われますが、それは褒めた場合の言い方で、普通に言えば「他人と同じことが嫌い」悪く言えば「へそ曲がり」「協調性がない」「集団行動が苦手」です。悪く言った場合の表現がほかより数が多いのは、気のせいです。
いや、実際フランスに暮らしてみるとこのことは痛感します。特に議論になると、みんな勝手に自分の主張を持ち出して譲らず、喧々諤々の話し合いになりますし、日本だったら3分でまとまるところが30分でもまとまりません。
たしかにこんな国じゃあファシズム=全体主義は絶対に成立しないよなあ・・・・お隣の国と違って・・・というぐらい、個性豊かな人々を見ていて思いますが、その自然と「人が右向きゃ俺は左向く」の発想が、時としていろいろな発明を生んできたのも事実。映画、缶詰、気球、蒸気自動車、フランスは発明王国でもありますし、学問の分野でも目覚しい業績をあげてきました。「人と違うことで名を上げる」ことに情熱を燃やすエネルギーが、それを支えているといっていいでしょう。
ただ、普通は、人と違うこと、言い換えれば今までと違う発想を使っても最終的には人に認められる業績を上げる、というのが最終目的のはずですが、フランス人の中には時として、この「人と違う」「普通でない」「理解されない」ことそのものが目的になってしまっているような人が出現します。
さしずめ、最近では世界の高いビルに「勝手に登る」フリークライマー、アラン・ロベール氏でしょうか。彼は、許可なしで登るのでいつも各国の警察にご厄介になっていますし、かつ、登ったところで違法ならギネスブックに載るわけでもなく、別に世界一のビルだけを狙っているわけではありません。本人の声を聞いたことはありませんが、どうやら「そこにビルがあるから登る」という考えのようです。普通の人はそこにビルがあってもエレベーターか、健康を気遣ってもせいぜい階段で登りますが、なぜかロベール氏は外壁を登りたくなってしまうようですし、その登ることそのものが目的なわけです。報酬や、賞賛ではなく。
そう、人間はどこかで現世的な欲望、人々の賞賛といった名誉や、高額な報酬といった金銭を求める心が捨てきれませんから、最終的に自分の行いをそれに結び付けようとしてしまうものですが、個性大好き主義のフランス人なかには、そういったものに一切興味を示さず、人と変わった行為だけを追い求めてしまう人がたびたび現れるのです。
恐るべしフランス人。
今日は、その中でも特に個性的なフランス人・・・いやブルターニュ生まれなんで「並みの」フランス人と同じくファーストネームを「Eric」と綴られることにさえ我慢がならず「Erik」と変えてしまった変わり者・・・エリック・サティの誕生日です。
エリック・サティの音楽を少し多くお届けする予定ですが、どうぞ、注意しないで、どうか、決して注意しないで、あらゆる不注意でもって、うっかりと、期待しないで、あたかもいやな音楽であるかのように、聴き流してくださると、彼はとってもうれしいかもしれないと私も考えるような考えないような。