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2010年5月

2010/05/31

芸術の独学

画家でも作家でも作曲家でも、なろうとおもえば、簡単になれます。絵をキャンパスに描くのも、文字を原稿用紙に書くのも(またはパソコンで文字を打つのも?)、音符を五線紙に書くのもそれほど難しいことではないからです。

でも、多くの人が、絵の教室に通ったり、小説を書く教室に行ったり、作曲技法を習ったりします。こういったところはいわゆる「作法」を教えてくれるだけで、それによって何を表現したいか、は教えてくれないわけですから、それは自分で見つけなければならない。または、過去の偉人たちの作品に接する、というほうがよりいいのかもしれません。

とまれ、どんな芸術も、独学で悪いという法はありません。むしろ、自分の表現意欲が強い人は、人に強制されないほうがよかったりします。

今日は、独学の薦め?です。

2010/05/28

カマラード

フランス語でカマラード、というと、ロシア語でいうところのタヴァーリシチ、つまり同志、という意味合いもあります。実際、この前ご紹介した映画、「オーケストラ!」では時代遅れのロシア共産党員がフランス語でこのように使っていました。

人種もいろいろ、言語もいろいろのヨーロッパでは、価値観を共有する仲間、というのが重要になります。人種や言語の差異が非常に少ない日本では、仲間というのは大前提で、そのうえで友人、という価値観を築いていくわけですが、ヨーロッパでは友達になるためには、いわばその前の文化的すり合わせ、のようなものが必要ということが、この言葉に表れているような気がします。

今日は、「アルテ・カマラーデン」というドイツ語の曲をご紹介します。日本では大変よく知られています。しかし、上記のような意味で、これを「旧友」というのは私は違和感があります。「旧い仲間たち」が直訳で、「一緒に軍隊生活を送った、苦楽を共にした仲間たち」とでもいいますか・・・そういえば、ヨーロッパではナポレオン軍以前は傭兵があたりまえで、「フランス王の兵」といってもスイス人だったりスペイン人だったりするのが当然でした。織田信長の軍勢が中国人傭兵・・・ということは間違ってもあり得なかった日本では、ちょっと理解しにくい状況でもあります。

(追記)番組中でご紹介した サントリーホール ブルーローズ サロンコンサートvol.4
パリの恋人たち~F.サガンのエスプリ
<ブラームスで始まる恋、モーツァルトで終る恋>について詳しくは下記のリンクをご参照ください。

http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/sponsor/100605.html

2010/05/27

似てるか似てないか?

間もなくサッカー・ワールドカップ2010南アフリカ大会の開幕ですね。残念ながら日本チームの活躍はあまり期待できそうにありませんが、それでも、世界一流の選手たちが激突するプレーはオリンピックと同じく、国籍に関係なく見入ってしまいます。

4年前のサッカーワールドカップドイツ大会、決勝を覚えておいでですか?下馬評の高かったブラジルや地元ドイツではなく、ましてやアルゼンチンやスペインではなく、決勝にコマを進めたのはイタリアと、フランスでした。しかもゲーム自体は1対1で双方譲らず、決着がついたのはPKということになったわけですが、そのPK直前にフランスの主将、ジデジーヌ・ジダン選手がイタリアのマテラッツィ選手に文字通り「激突」・・頭突きをくらわすというアクシデントがあったために、なんとなく双方後味の悪い幕切れでもありました。

この二国、サッカーももちろんワールドカップ優勝級の実力を誇り、双方ともラテン語の子孫の言葉を話し、カトリックの総本山とカトリックの長男と呼ばれる信仰の厚さを持ち、料理はもうほかのヨーロッパの国をすべて退けてしまう二大横綱、ファッションも他国の追随を許さず、音楽も美術も一流をそろえ・・・とやはり似たところが多い。しかしながら、だからこそ違うところもまた目立つわけで、そこにフランス「北」のメンタリティとイタリア「南」のメンタリティの差異もあったりして、ときどき「激突」することもあるわけです。まあ、十字軍の昔から、いや、ひょっとしてカエサルのローマ時代から、この二国、というか二大文化地域は微妙な近親憎悪的感情があったかもしれません。

今日は、この似たようで似ていないようで、やっぱりライバルの、二つの国の音楽を中心にお送りしましょう。朝食はクロワッサンにカプチーノがよろしいでしょうか?

2010/05/26

パンはお好きですか?

パンが好きか、ということに関して、どうも男女差がある気がします。

私自身は,パンの国と言っても過言ではないおいしいバゲットの母国、フランスに10年以上暮らしていながら、パンを渇望する、という欲求は少なく、1日3食ご飯でもいっこうに苦痛は覚えません。むしろ麺類が絶えることの方が絶えられないような気がします。だから、気がつくと、朝ご飯、昼麺類、夜ご飯、ということも多いのです。

私の周囲の女性と男性にアンケートを採ったところ、男性は私と同じような感じで、「あ・・パンをしばらく食べていない・・」という感覚でも平気なところ、女性陣は、1日1回はパン食、という方が圧倒的でした。また、先日も有名な骨董商の方が、奥様はパン、旦那様は米食、という朝食を20年以上続けている・・というようなことをおっしゃっていました。皆さんの周りはどうでしょう?

そもそもヨーロッパ文明の曙よりあったと思われるパン。同じく、アイコンであるワインなどは定住を必要とするため、遊牧民族にはなじまない物でしたが、パンは、パレスチナの羊飼いたちにも食べられていました。

そんなパンとともに今日は放送をお送りしましょう。

放送後追記

いよいよ今日から東京・六本木の国立新美術館で開催される オルセー美術館展2010「ポスト印象派」にいって参りました。

ナビ派の私の好きな絵の1枚も来日中。

F.ヴァロットン「ボール」

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A.シスレー「モレの橋」

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ついでに・・これが現在の風景

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2010/05/25

スペクタクル

フランス語でスペクタクル、というと日本語の「ショー」という訳語が当てはまるでしょうか、一般的には劇場などで見ることのできる出し物がそれに当てはまります。しかし、一方で万国博覧会には長い歴史を持つこの国のことですから、室内の劇場だけでなく、屋外の展示物を並べた展示などもスペクタクル、と呼ぶ場合があります。

パリの有名なシャンゼリゼ通りは凱旋門のあるシャルル・ドゴール広場からオベリスクのあるコンコルド広場まで全長がぴったり2キロです。その真ん中、ロン・ポワン・デ・シャンゼリゼと呼ばれる広場を境に凱旋門側が写真などでおなじみのカフェなどが軒を連ねる遊歩道、反対にコンコルド広場方面に向かっては「極楽の庭」という名前の通り、木立に囲まれた気持のよい遊歩道が広がります。歩道、といっても幅が20メートル以上あるので、ここはたびたび展示スペースに使われます。私はたまたま近所に住んでいたことがあるのですが、その時に、実際の鉄道車両や航空機が展示されたことがありました。どうやって運びこむのだろう?と考えてしまいましたが。

先日、フランス全土の農業をアピールするために、農業生産者たちがここで「畑」を再現したようです。もともと庭のような雰囲気のところ、さぞかし農産物が似あったと思いますが、今日は、さまざまなヨーロッパのお話をしながらお送りしましょう。

2010/05/24

コモンウェルス

正確にはブリティッシュ・コモンウェルス、そのまま直訳して英連邦、となります。現在はそれぞれの主権国家に配慮してコモンウェルス・オブ・ネーションズ、なんだかソビエト崩壊後の「独立国家共同体=CIS」みたいですが、要するに、その昔はブリティッシュ・エンパイア、「イギリス帝国」といっていた物を言い換えたものです。

現在はもう「帝国」の時代ではないので、帝国主義、というと100%ネガティブな意味でしか使われませんが、現在でもたとえば経済の結びつきによって大国や富める国が貧しい資源国を取り込もうとするなど、その動きは帝国時代と変わっていない部分も多くあります。資源も20世紀はともかく原油、これのみでしたが、最近は電池技術や最先端エレクトロニクスで使われるいわゆる希少金属レア・メタルや生活に欠かせない水、なんていう物まであります。そういえば帝国主義時代に権勢を誇ったイギリスとフランスですが、両国の水道会社(民間)は世界各地で水資源開発という名の資源押さえをやっていますね。

ともかく、イギリスが世界各国に及ぼした影響は甚大な物でした。イギリスが発祥のため、フランス語でもFootBallというあの競技、日本語ではサッカーと呼ばれるものの世界大会がまもなく開かれますが、開催地の南アフリカ共和国は1度脱退してもう一度加盟した立派なコモンウェルス構成国です。ラグビーも盛んで、マンデラ元大統領はこれを国のまとまりに利用したことが映画になったばかりですね。

イギリス発祥のスポーツといえば、ゴルフもそうですね。これも世界各地で行われていますが、極東の島国日本でも、ものすごく定着しました。私は飛行機で日本上空を飛ぶと、いつもその国土面積に比してゴルフ場の多さに目を見張ります。そんな、ゴルフが盛んな国ニッポンに初めてゴルフ場が出来たのも、今日です。明治36年、神戸でのことでした。

今日は、イギリスの香り多き曲目を選択しましょう。

2010/05/21

大西洋を東に西に

地球上の大陸を北から南まで隔てる大洋は大西洋と太平洋があるのに、大西洋のほうが印象が強く、太平洋はいまひとつ影が薄い印象があります。

コロンブスのアメリカ大陸発見は誰でも知っているトピックスなのに、マゼランが太平洋横断し、しかもその途中で死んでしまい、残りの乗組員が本国スペインまで戻った、ということ詳しく知っている人は少ないと思います。どうしても、欧米中心の歴史観の中では、大西洋が重視されるのは仕方ないことのように思われます。

そして、この記録も、圧倒的に大西洋が有名。C.リンドバーグの大西洋単独無着陸横断飛行成功、です。「翼よあれがパリの灯だ」の名訳で知られる映画にも、物語にも、なっていますが、逆に、太平洋無着陸横断を最初に成し遂げた人の名を記憶している人はほとんどいないと思います。

さらに、彫像。ギュスターヴ・エッフェルが骨格の設計に携わっている世界で一番有名な彫像は、リンドバーグとは逆方向に、大西洋を渡りました。

太平洋に近い日本人としては、少しジェラシーを感じますが、今日は大西洋を行ったり来たりしましょう。

2010/05/20

風の音の楽器

季節の変わり目というのは気温が変わるわけですから風が吹きます。暖かい空気を運んでくる南風、冷たい空気とともに北風、と地球に住んでいる限り風とは親しくしなければいけないわけですが、ヨーロッパにもシロッコだとかゼフィーロだとか、風に名前をつける場合もありますので、人々と風の関係の深さがうかがえます。

話変わって風を音にする楽器、管楽器はそれなりにバラエティ豊かです。オーケストラの中でも金管はトランペット、トロンボーン、ホルン、チューバといったところ、木管はオーボエ、クラリネット、ファゴット・・と沢山ありますが、その中でもっとも風に近いのがフルートかもしれません。昔木で作られていたために現代では金属製でも木管楽器に分類される横笛、フルートは柔らかく詩的に、風を思い起こさせる音色をつむぎます。

学ぶ楽器としても人気の高いフルートは、近代になるまではオーケストラの中の一楽器、つまりソロ・楽器としてはあまり高い評価を得ていませんでした。そんなフルートの地位を向上させたフランスのフルーティストのお話とともに、フルート=風の音色をたくさんお届けします。

ちなみに私は一昨日より風邪気味。季節の変わり目はまた風邪の季節でもありますから、皆様、こちらの風邪にはお気をつけください。OTTAVAルームもほとんどの人がマスク姿です。べくしょいっ

2010/05/19

アメリカの底力

21世紀になってから世界をリードする超大国アメリカのイメージも陰りが見えているように感じられます。ちょうど前世紀にイギリスが英国病と揶揄されたように、絶頂期を誇った国というのは、そのあと少しでも勢いがなくなると周りからとやかく言われるものです。

クラシック音楽において、正直なところ、アメリカやイギリスはドイツやオーストリアやフランスほどに重要な国ではありませんでした。これはプログラムに使われる曲の作曲家の国の統計をとったらすぐ証明できるはずです。

しかし、アメリカは、表には現れなくとも音楽には多大な貢献をしてくれています。旧大陸で迫害を受けたたくさんの演奏家や作曲家を受け入れただけでなく、戦乱をさけて市場を開拓するためにやってきた楽器制作者まで、アメリカには文字通りアメリカン・ドリームを実現させてくれる懐の深さがありましたし、曲がりなりにも、それは現代でもあると思います。

今日は、「大国ではなくなったか?」ということでアメリカやトルコが登場します。

2010/05/18

さすらいの意味

私は結構な車好きなので、無意識に周りの車を観察してしまいます。

日本は島国ですし、法律が厳しくて車検制度が行き届いていますから、驚くようなことはごく少ないのですが、ヨーロッパの中央に位置して観光的にも人気の高いフランスでは良く驚きます。車検制度のないフランスでは窓が無くてビニールを貼り付けて走っている車などは当たり前、中にはドアの無い車なんてものまで走っていまして、あれで大丈夫なのだろうか?と他人の事ながら心配になりますが、これはフランスの車のお話。

地続きのヨーロッパでは、そして国境検問が無くなった現在のEUでは簡単に他国の自動車がその国の香りとともにやってきます。パリコレの季節、パリ中心部のリヴォリ通りにはドイツナンバーのメルセデスSクラスがずらっと並んだり、ホテルリッツの前にはスーパーカーが並んでいるな・・と良くナンバーを見たらアラブ首長国連邦のナンバーだったりというのも珍しくありませんし、一方でさすがに旧東独のトラバントは見ませんがエストニアナンバーの小さな車がパリ郊外の高速道路の走行車線をのんびりと走っていたりもします。国境を越えると車も代わり、ドイツからチェコへ入ると、道や建物よりまず最初に走っている車が変わることでわかりますし、ルクセンブルク、というような「小さくても裕福な国」というのはなかなかイメージがわきませんが、ルクセンブルクナンバーをつけた車はドイツ車の新しい物が多い、というところから、資料を見るよりお国柄を想像することが出来ます。そういえば・・・裕福な国、を実感したのはスイスのチューリッヒでのことでした。後にも先にも自分の車がフェラーリF40とランボルギーニ・ディアブロに挟まれたのは、スイスでだけです。

高級車はスポーツカーはさすらう=移動することを愉しんでいるように見えますが、一方で、生活をかけて必死に移動しているように見える車も多々あります。フランス人の長距離移動は大体バカンスですが、バカンスなどとれなく必死に国から国へ移動している、という状況の人たちを道で見かけることも少なくありません。

移動は、旅行は、さすらいは、人々にとっていろいろな意味があるわけです。

今日は、さすらいの遍歴を愉しんでいるように見えるスペインの作曲家と、さすらいが運命だと悲観的にとらえていた対照的なボヘミアの作曲家が登場します。

2010/05/17

右向け左。

フランス人は個人主義だとよく言われますが、それは褒めた場合の言い方で、普通に言えば「他人と同じことが嫌い」悪く言えば「へそ曲がり」「協調性がない」「集団行動が苦手」です。悪く言った場合の表現がほかより数が多いのは、気のせいです。

いや、実際フランスに暮らしてみるとこのことは痛感します。特に議論になると、みんな勝手に自分の主張を持ち出して譲らず、喧々諤々の話し合いになりますし、日本だったら3分でまとまるところが30分でもまとまりません。

たしかにこんな国じゃあファシズム=全体主義は絶対に成立しないよなあ・・・・お隣の国と違って・・・というぐらい、個性豊かな人々を見ていて思いますが、その自然と「人が右向きゃ俺は左向く」の発想が、時としていろいろな発明を生んできたのも事実。映画、缶詰、気球、蒸気自動車、フランスは発明王国でもありますし、学問の分野でも目覚しい業績をあげてきました。「人と違うことで名を上げる」ことに情熱を燃やすエネルギーが、それを支えているといっていいでしょう。

ただ、普通は、人と違うこと、言い換えれば今までと違う発想を使っても最終的には人に認められる業績を上げる、というのが最終目的のはずですが、フランス人の中には時として、この「人と違う」「普通でない」「理解されない」ことそのものが目的になってしまっているような人が出現します。

さしずめ、最近では世界の高いビルに「勝手に登る」フリークライマー、アラン・ロベール氏でしょうか。彼は、許可なしで登るのでいつも各国の警察にご厄介になっていますし、かつ、登ったところで違法ならギネスブックに載るわけでもなく、別に世界一のビルだけを狙っているわけではありません。本人の声を聞いたことはありませんが、どうやら「そこにビルがあるから登る」という考えのようです。普通の人はそこにビルがあってもエレベーターか、健康を気遣ってもせいぜい階段で登りますが、なぜかロベール氏は外壁を登りたくなってしまうようですし、その登ることそのものが目的なわけです。報酬や、賞賛ではなく。

そう、人間はどこかで現世的な欲望、人々の賞賛といった名誉や、高額な報酬といった金銭を求める心が捨てきれませんから、最終的に自分の行いをそれに結び付けようとしてしまうものですが、個性大好き主義のフランス人なかには、そういったものに一切興味を示さず、人と変わった行為だけを追い求めてしまう人がたびたび現れるのです。

恐るべしフランス人。

今日は、その中でも特に個性的なフランス人・・・いやブルターニュ生まれなんで「並みの」フランス人と同じくファーストネームを「Eric」と綴られることにさえ我慢がならず「Erik」と変えてしまった変わり者・・・エリック・サティの誕生日です。

エリック・サティの音楽を少し多くお届けする予定ですが、どうぞ、注意しないで、どうか、決して注意しないで、あらゆる不注意でもって、うっかりと、期待しないで、あたかもいやな音楽であるかのように、聴き流してくださると、彼はとってもうれしいかもしれないと私も考えるような考えないような。

2010/05/14

必要悪

世の中何でもそうでしょうが、練習、というものは楽しくありません。

スポーツでも、芸事でも、もちろんピアノでも。しかしながら、練習をしないとある程度以上の技術は習得できません。練習が足りないと、スポーツではちゃんとしたフォームが身につかず結局限界を下げることになったりしますし、ピアノではぎくしゃくした演奏に往々にしてなるものです。

だから、何事にも練習のメトードというものが存在しますし、ピアノにおいては練習曲、とよばれる分野だったりします。だから端から難しいのは既定事実ですし、技術の習得に主眼が置かれていますから、音楽性は二の次・・だったりして、あまり弾きたいという気持ちが起こらないものがあったりするのも事実です。

でも、中には一流作曲家の腕によって、すばらしい練習曲が書かれる場合もあります。

今日は初学者入門として使われることの多いバイエル教則本を書いたF.バイエルの命日。練習曲がちょっと多めに登場します。

2010/05/13

先進と反動と

ヨーロッパの歴史からみると、フランスの首都パリは革命を、それも血なまぐさい革命をいち早く成し遂げてしまった都市として、先進的なイメージがあります。たしかに、古くから外国人の往来も多く、現在でもパリは、割合とアヴァンギャルドな側面を隠していません。

一方、オーストリアの元帝都ウィーンは、革命後のナポレオン打倒後の会議の舞台として、王政側のイメージ、結局、皇帝家が最後まで存続するといった、過去の栄華を引きずった・・・イメージがあります。

ところが、19世紀末の美術や音楽や建築では、ものすごく前衛的なものが突如現れてきたりと、なかなか先進的なところもあったりします。

また、ウィーンは基本的にはドイツ語圏ですから、ドイツ的なしっかりした、かっちりしたイメージがあるのですが、山を越えればイタリアにも近く、また東欧にも非常に近い地理にあります。そのために、北ドイツ、たとえばベルリンやライプツィヒといった都市とは優美さという観点において、やっぱり差異があるのです。

そんなオーストリア帝国を象徴する女帝に今日は登場してもらいます。合わせてウィーン風の音楽も沢山。

番組中でご紹介した「オペラで乾杯!ワインな一夜 クラシックと益博」の公演について詳しくは下記リンクをご覧ください。

http://www.nikikai21.net/concert/week_2010.html

2010/05/12

メランコリック

メランコリーを辞書で引くと、「憂鬱」というような言葉が出ています。

あまり積極的な意味ではありませんし、人間の精神状態としては、健全とはいえませんね。

しかし、メランコリーは憂鬱、でしょうか?ショパンの曲は多くがメランコリーと形容されますし、ショパンの活躍したフランスの作曲家たちはいずれもメランコリーな作品を残していると、私は思います。

いきなり話は飛びますが、それはパリの位置が関係しているのではないか?フランスはドイツやイタリアと違って、パリ一極集中の国です。出身は地方でも、パリで名を上げたという話がほとんどで、その状況は現代でも変わっていません。そして、そのフランスの首都、パリはものすごく北にあるのです。日本地図に重ね合わせると北海道の北も北、サハリンの中央ぐらい、がパリの緯度です。

そして、その高緯度都市パリでは、太陽が低い。白夜にはなりませんが、ちょうどこの時期から実施されるサマータイムで日が長い日ですと、夜の11時ごろまで太陽がでています。

そのような、低い位置から淡い光に照らされるパリ、私はこの都市自体がメランコリーな雰囲気を持っている気がしますし、それは決して「憂鬱」ではありません。どちらかというと、メランコリーという「美」だと思います。

今日は、メランコリーをお届けできるでしょうか。フランスを代表する作曲家、いや、とてもフランス的な作曲家というべきでしょう・・・J.マスネとG.フォーレの誕生日です。

2010/05/11

とりあえずじゃない!

日本で最も呑まれているお酒といえば、間違いなくビールでしょう。もともとヨーロッパが本場の物でしたが、日本の暑い夏の気候のことなどもあり、輸入されてから100年足らずで、最も消費量の多い国民酒、となったといっても過言ではありません。

しかあし!そんなビールをわれわれはおざなりに扱っていないでしょうか?酒税法の網を逃れるために、ミュンヘンのビール純粋令に照らしたらおよそビールでないものがビール顔でならんだり、これは量を飲みたいビール好きとしてはしょうがないのでしょうが、そんなビール好きでも平気で「とりあえずビール」と言ってしまったり・・・ビールはほかのお酒の前座ではありません。

ビールのおいしい本場ドイツやベルギーやチェコでは、最初から最後までビール、っていうかつまみもなしにビールまたはビール、というのが結構普通です。それはのど越しや清涼感だけでなく、しっかりと味わいがあるビールだからなのですが、もともとビールは麦汁のおいしさを味わえるもので、パンという主食も麦からつくられる麦にこだわりのあるヨーロッパでは、ビールも麦を感じる食べ物の一種、といってもいいぐらいなのかもしれません。

今日は、ビールのおいしい国の作曲家2人が9時台に登場します。わたしも、チェコやオーストリアで飲んだおいしいビールの味を思い出しながら、放送します。

2010/05/10

紅茶は旅をして

食べ物というのは、なるべく旅をさせないほうがよいといわれます。いわゆる地産地消ですね。たしかに、豊富に世界の食材や料理が手に入るようになった日本ですが、それでも、その土地に行って食べたり飲んだりしたものにはかないません。

しかし一方で、移動することによって有名になったり価値が上がったりする食材があるのも真実です。たとえば、ボジョレ・ヌーボーなどは地元では単なる新酒の一種でしたが、イギリスはロンドンに持ち込む競争がイギリス人によって始まって、いまでは日本で大ブームですね。

ボジョレなどとは比較にならないぐらい移動することによって世界を席巻したのが紅茶です。これも同じくイギリスのおかげ。お茶の国というのは本来東洋で、その中心は緑茶ですが、イギリスによって世界に紅茶が普及したおかげで、現在は紅茶の消費量のほうが緑茶や烏龍茶よりははるかに量が多い、というのは何とも皮肉な話です。つまり旅をした食材のほうが、価値が出たということですね。

今日は、そんなイギリスの紅茶王が登場します。

2010/05/07

名作曲家の条件

タイトルを「大」作曲家にしようか、「名」作曲家にしようか悩んだのですが、「大」は定義が難しいので、「名」にしました。大演奏家か名演奏家か、これも難しい・・・ただ「大」よりも味がある、人気がある、という意味をより込めて、名作曲家の条件を考えてみたく思います。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010で主人公だったショパン・・彼はわずか全22時間の作品しか残していませんし、ほとんどがピアノソロの曲で、オペラもなければ交響曲もなければ交響詩も弦楽四重奏曲もない。ナイナイづくしの偏った作品しか無いのですが、間違いなく人々に愛される名作曲家ですね。同じ生誕200年を迎えていて劇音楽もあれば交響曲も複数ものにし、室内楽も頻繁に演奏される名曲を作り、ピアノソロの曲でも大曲の名曲を作り、歌曲もショパンのようにこっそりとではなくドイツリートの神髄のような佳作をつくっていても、シューマンの方が人気の点ではショパンに劣ってしまうわけですから、ショパンは大作曲家ではなくとも、名作曲家であるのは間違いありません。それは人々に記憶される旋律をつくったからではないかと思っています。私は、名作曲家という言葉の中に「人々に愛される」という意味合いを少し感じているようです。

そういう意味では、今日登場する二人の作曲家は紛れもなく大作曲家であり、名作曲家でもあります。

二人とも立派な交響曲から室内楽、ピアノ曲をつくった一方で、人々に大変愛される旋律もたくさん生み出しています。形式張った難しい曲だけでなく、楽しく感じられる舞曲も・・・

今日はドイツのブラームス、ロシアのチャイコフスキー、両巨匠の誕生日です。

2010/05/06

持つべきものは優秀なアレンジャー?

現代の商業的音楽にはアレンジが欠かせません。理由はいくつもあり、テレビやラジオだと時間(いわゆる尺)というものが決められているので、そのタイミングに合うように編曲、手配できる、または会場の大きさによるオーケストラやバンドの編成に併せて編曲、中には作曲者が譜面を読めないので、コンピューターへの入力によって「作曲」された曲を現実の楽器を使う曲に仕上げる編曲、などというものまであります。

クラシック音楽は、作曲家の作品がオリジナルとされ尊重され、それになるべく忠実な再演が心がけられますので、ふと忘れてしまいがちですが、日常で我々が接する音楽の多くの曲は「編曲後」の作品です。そして曲に対する貢献度は作曲家に優とも劣らず、いや、場合によっては作曲家よりも重要な役割を果たしていることさえあるのです。

しかし、作曲家、にくらべて編曲家、は目立たない、日陰の存在です。ちょうど、作家、と編集者、のように、確かにアイデアは創作家が作ったとしても、それを世の中の人に理解してもらう形にする、という作業にはその分野に造詣が深い必要があり、真のプロフェッショナルが求められるのです。

今日は、編曲や演奏をすることによって、音楽に多大なる貢献した人に登場してもらいます。そして、当然、その人は音楽に造詣が深いのですから、教育者としても、すぐれた業績を残しました。

2010/05/05

子供に伝わる伝統

今日は、こどもの日。やはり子供にまつわる曲をお送りしたいと思います。

しかし、広義の「子供」についてもお話しをしたいと思います。ここでいう子供、というのは、血のつながった子供、だけではなく、師匠と弟子、というときの「教え子」という意味合いです。

音楽家を我々が扱うとき、作曲家でも演奏家でもいいのですが、「その人」だけ扱いがちです。でも、私も音楽家の端くれとして、音楽は、まことに師匠の影響が大きい。これは日本の伝統音楽などもより一層、そういった面があるらしいのですが、楽譜という合理的かつ効率的な伝達手段があっても、伝統芸である音楽は、「師匠からの薫陶」が無ければ、なかなか成熟した物になり得なかったりします。

いってみれば、どんな音楽家も、その先生や、周りの教育環境があってこそ大成したわけで、ある意味、音楽の師弟関係というのは、実の親子より関係が密接だったりします。

教育が大事、というのはいつも変わらない真実のようです。

2010/05/04

元祖ハイブリッド

いま、車の分野ではハイブリッドばやり。電気自動車やクリーンディーゼルやダウンサイジングターボ過給などの他の技術もめざましい進歩を遂げていますが、日本のトヨタが作ったプリウスがブームになったので、環境に優しい車として、いまはハイブリッドばやり、といってもいいのかもしれません。

ハイブリッド、とは車の場合は伝統的な内燃機関(エンジン)と電気モーターを組み合わせる、というところから名付けられているのですが、今日の主人公の楽器も、いわばハイブリッドです。

それは、今年のラ・フォル・ジュルネの主人公、ショパンの愛した楽器、ピアノ。

木、でできた楽器は弦楽器など、多くあります。ピアノも筐体(外側)は木。そのため、木の家具などと同じテイストで、部屋の中においても違和感がありません。でも、実態は、ピアノ線という強力な鉄の線を強い力に耐えられる鋳鉄のフレームに張った金属の固まり。中はぴかぴかしているのは、金属のせいですね。

そして、その弦をたたくのは羊の毛を圧縮して作ったハンマーだったりします。

ハンマーで「たたく」わけですから、打楽器として分類しても良いはずなのに、ちょっとちがう。ピアノはなめらかに音をつなげる奏法、「レガート」が出来るのです。なかなか太鼓などの打楽器には出来ないこと。むしろ弦楽器などの得意分野です。つまり出てくる音もハイブリッド的。

今日は、ピアノを発明したとされるイタリア人 B.クリストフォリの誕生日。ピアノの歴史をつれづれにお話ししたいと思います。

2010/05/03

憲法記念日と法律

ゴールデンウイークもまっただ中ですね。お天気がつづいて今日もさわやかな朝です。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日音楽祭」も始まり、OTTAVAのスペシャル放送はショパン一色です。私もショパンだけというプログラムを、小さい物ですが、昨日弾かせていただきました。ご来場くださった皆さん、ありがとうございます。

朝のfrescoはいつも通り。今日は、私は午後、東京国際フォーラムからOTTAVAスペシャル salon de Chopin をお送りする予定なので、あえて、朝のfrescoは別の視点からお送りしたいと思います。

ゴールデンウィークというと、どうしても休日がつながっている・・・ととそのことだけ意識がいきますが、今日は、憲法記念日。というわけで「法」について少し考えてみたいと思います。もちろん、それだけじゃつまらないので、祝日だったり、お祭りだったり、ワルツだったり、とつれづれにお送りしたいと思います。

(放送後追記)すいません!間違えました。最終のリストのハンガリー狂詩曲、ラ・フォル・ジュルネ のナントでのエンゲラー&ベレゾフスキー版をお送りする予定でしたが、まちがって、いつもお届けしているヤンドーのソロ版を出してしまいました。なんとか、今日のラ・フォル・ジュルネ・スペシャルの中で4手のライヴ版をON AIR出来ればと、今、ディレクターさんに頼んでおります・・・。

それでは14時から、東京国際フォーラムとOTTAVAで再びお会いしましょう!

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本田聖嗣

東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒。パリ国立高等音楽院ピアノ科・室内楽科を共にプルミエ・プリ(1等賞)で卒業。在学中よりヨーロッパ各地で活動を始め、2000年秋、東京・紀尾井ホールにて、「馥郁たるパリの香り」のタイトルの下に日本国内ソロリサイタルデビュー。同タイトルでオクタヴィアレコードより2枚のアルバムも発売されている。

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