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2008年4月

2008/04/30

祭りの直前

いよいよラ・フォル・ジュルネも、本番を控えてOTTAVAスタッフも動きが猛烈にあわただしくなってきました。こちらもシューベルトの紹介ざんまいで、気分を盛り上げていきたいと思います。それにしても、ラ・フォル・ジュルネ以前の日本のクラシック音楽界で、ここまで一つのテーマで事前に盛り上がったことってあったでしょうか…? やっぱり、これってすごいことなんじゃ…。

「メシアン その音楽的宇宙」(クロード・サミュエル著、戸田邦雄訳/音楽之友社)

今年はメシアンの生誕100年ということもあり、関連コンサートもいくつか予定されているようです。20世紀フランス最大の作曲家だったメシアンの音楽は、OTTAVAでもときどきかけていますが、その輝かしさ、高貴さは群を抜いています。自らのカトリック信仰、オルガン演奏の秘密、鳥の声の採譜など、あらゆる事柄についてメシアンが語りつくしている本書は実に読み応えがあり、作曲家の肉声を伝える貴重な本といえるでしょう。入手困難なのは残念です。

                                                 林田

2008/04/29

連休

あっという間に連休が来てしまいました。今日は夏を予感させるような日差しの強い一日でした。半そでの人もチラホラ。こういう季節にふさわしい名曲って結構あるんですよね。

Couv20mir04320engerer 今週もラ・フォル・ジュルネ関連でシューベルトとその周辺の音楽をたくさんご紹介します。このところ取り上げているルネ・マルタンのレーベルMIRERE(ミラーレ)から、今日はブリジット・エンゲラーのピアノによるリスト編曲のシューベルト(MIRARE 043)を。

「沈黙の絵画」(ジョルジュ・バタイユ著、宮川淳訳/二見書房)

バタイユによれば、マネこそ別格の画家であり、マネから近代絵画が始まります。バタイユは書いています。「マネは制作の対象に一輪の花か一匹の魚を選んだときと同じ無関心さで死刑囚の死を描いた。たしかにマネの絵画は物語っている。それはゴヤの絵にも劣らず物語っている。しかし、それが物語っているものに対する無関心さの中でなのだ」。こうした現象は、少なからず音楽の世界にも起きたことだという気がします。

                                                   林田

2008/04/28

大作曲家の信仰と音楽

たくさんの歌曲を歌ってきたリート歌手の方にとって、シューベルトという作曲家は

「いつでも帰ってきたくなる『本物』」のメロディーを書いた人物だとも言います。

シューベルトの音楽の中にある清らかさや純粋さは、無条件に信頼できるものだと

いうのです。ボヘミアン生活を続け、貧困の中で最期を遂げたシューベルトにとって

彼の芸術を支えていたのは、大きな信仰心でした。

ミサ曲のみならず、歌曲にも宗教的なテーマのものが多いのはそのせいでしょう。

実際に、聖書のフレーズに作曲したものもあります。

今日は、ラ・フォル・ジュルネに出演するアーティストのご紹介の間に

そうしたシューベルトと「神」との関係について、彼の死とお墓について

トークしてみたいと思います。

小田島

大作曲家の信仰と音楽

たくさんの歌曲を歌ってきたリート歌手の方にとって、シューベルトという作曲家は

「いつでも帰ってきたくなる『本物』」のメロディーを書いた人物だとも言います。

シューベルトの音楽の中にある清らかさや純粋さは、無条件に信頼できるものだと

いうのです。ボヘミアン生活を続け、貧困の中で最期を遂げたシューベルトにとって

彼の芸術を支えていたのは、大きな信仰心でした。

ミサ曲のみならず、歌曲にも宗教的なテーマのものが多いのはそのせいでしょう。

実際に、聖書のフレーズに作曲したものもあります。

今日は、ラ・フォル・ジュルネに出演するアーティストのご紹介の間に

そうしたシューベルトと「神」との関係について、彼の死とお墓について

トークしてみたいと思います。

小田島

2008/04/25

ウィーン ウィーン

ルネ・マルタンの監修するレーベル、ミラーレから続々シューベルトの曲のCDが到着しています。

ラ・フォル・ジュルネに出演するアーティストの演奏を、このシリーズからお楽しみいただくほか、

今日はウィーンの色々なアーティストについてご紹介いたします。

現在来日中のウィーン少年合唱団も、先日記者会見に行ってまいりましたが

とても元気はつらつとしていました♪ 今年のシューベルト組は、世界各国の色々な歌を

披露してくれます。指導の先生も、とても二枚目でした。

さらにさらに、昨日東京オペラシティでリサイタルが行われた、イェルク・デームスの

ご紹介も・・・現在80歳のこの巨匠は、かつてフリードリヒ・グルダらとともに

「ウィーン三羽烏」と呼ばれた方でもあります。プログラムはバッハ、ベートーヴェン、

ブラームスの「三大B」だったのですが、ブリュートナーのピアノの音色もつややかで

ブラームスなどは、デームス氏にしか表現できない境地に達している演奏でした。

新譜のご紹介は、2000年のショパン・コンクールで第二位に輝いた

(もう八年前の話になるのですね・・・)イングリット・フリッターの「ショパン・アルバム」

をご紹介いたします。

小田島

2008/04/24

今日もシューベルトがたくさん

ラ・フォル・ジュルネを前に、もう急ピッチでシューベルトのさまざまな曲をOTTAVAでは準備中です。その中には、ここ数日ご紹介させていただいている、ルネ・マルタンのレーベルMIRARE(ミラーレ)のものもありますし、今年のナントでのライヴ音源もたくさんです。今日は、アンドレイ・コロベイニコフ(ピアノ)の即興曲集op.142、フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル、ハンス・イエルク・マンメル(テノール)によるツェンダー編曲による「冬の旅」、そしてレネゲイズ・スティール・バンド・オーケストラによる交響曲第7番「未完成」など、盛りだくさんのシューベルトをご紹介します。

221710 「作曲家 人と作品 ヘンデル」(三澤寿喜著/音楽之友社)

2009年はヘンデル没後250年です。うわさでは来年のラ・フォル・ジュルネはバロック音楽がテーマになりそうということですが、ぜひヘンデルにスポットが当たってほしいものです。まだ未知の部分の多いヘンデルについて、トータルなガイドをしてくれる最適な案内書。ヘンデルが活躍した18世紀のロンドンの状況についても詳しく触れられているのも魅力です。

                                                   林田

2008/04/23

コルボのミサ曲第6番

Couv20mir0512072dpi 今日はMIRAREレーベルの音源から、ミシェル・コルボ指揮ローザンヌ声楽アンサンブル他の演奏で、シューベルトの晩年の傑作であり、ラ・フォル・ジュルネ期間中もメインプログラム級の公演として繰り返し取り上げられる「ミサ曲第6番変ホ長調D.950」をご紹介します。

「ピカソ その生涯と作品」(ローランド・ペンローズ著、高階秀爾・八重樫春樹訳/新潮社)

20世紀最大の芸術家であり、各ジャンルに絶大な影響を与えた巨人でありながら、信頼できる伝記がなかなか見当たりません。イギリスの代表的批評家ペンローズはピカソの友人でもあり、その代表作といわれるこの重厚な伝記は、ひとつの時代を伝える証言であり、音楽史の面から見ても興味深いものがあります。ピカソの人間性を伝える豊富なエピソードと図版も満載。1978年に刊行され、いまは古書でしか見当たらない本ですが、このような良書が入手困難なのは残念なことです。ぜひ図書館で探してみてください。

                                                  林田

2008/04/22

MIRAREその2

Couv20mir0522072dpi_1 いよいよラ・フォル・ジュルネが目前に迫ってきました。OTTAVAもシューベルト・モード全開になりつつあります。それと連動して、ルネ・マルタンのレーベルMIRARE(ミラーレ)から、今日はトリオ・ショーソンの演奏によるシューベルトのピアノ三重奏曲第2番とピアノ五重奏曲「ます」(MIR052)の一部をご紹介します。

「西洋音楽史大系」(石井宏監修、学習研究社)

オランダ・ヘリテージ・オブ・ミュージック社の編集による全11巻の、クラシック音楽史全般をスケール大きく描き出そうという大作。55人の音楽学者たちによる、専門用語をなるべく使わない平易な解説は、とても読みやすく、しかも示唆に富んでいます。特筆すべきは図版の豊富さで、各作曲家の自筆楽譜やあまり知られていない肖像画やスナップ写真、舞台装置のデッサンなど、音楽へのイメージをかきたててくれる貴重な視覚的刺激が満載の豪華なシリーズです。市場にはほとんど出ていないようなので、図書館での閲覧をお勧めします。

                                                  林田

2008/04/21

作曲家と降霊術

ちょっと不気味なタイトルをつけてしまいましたが、今は亡き大芸術家の作品を演奏する

という行為には、突き詰めれば相手の霊魂とコンタクトする、といった意味合いも

あるように思えます。

先日テレビで見たアンドラーシュ・シフの演奏は、まさにベートーヴェンやシューマンと

スピリチュアルに交信していたような趣でしたし、演奏が終わった後もしばらく瞑想をし

拍手までのその間に、作曲家が「降りてきた」ことを確認していたようでした。

また、面白いことに、作曲家によって簡単に降りてきたり、あるいは演奏家との一体化を

拒む「クールな霊」もいるように感じられます。

フレンドリーな霊は、バッハ、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、リスト

クールで距離感のある霊は、ショパン、ラヴェルなど。

まったく中性的な霊 モーツァルト・・・。

こう書いてしまうのもやや奇妙なのですが、演奏家の方たちはどう感じているのでしょう?

シューベルトに関して、よい演奏というのはどこかそうしたオカルト的な凄みがあるように

思えますし、その意味でもアファナシエフや内田光子さんはすごい。

今日ご紹介するフランク・ブラレイは、ラ・フォル・ジュルネの常連でもありますが

彼は逆に、降りてこようとするシューベルトにむかって「君は今の場所にいて」

とささやいているような演奏をしていると感じました。

ブラレイのシューベルトも実際にお聴きいただけます♪

(ブラ霊、と変換してしまうところでした・・・)

小田島

2008/04/18

ビバ! シューベルト

EMIクラシックスからリリースされる二枚組CD「ビバ! シューベルト」は

ラ・フォル・ジュルネを前に期待をふくらませるクラシック・ファンにとって

格別の参考CDになると思います。「有名曲編」と「人生編」に内容が分かれており、

「軍隊ポロネーズ」や「楽興の時」が収録された有名曲編の素晴らしさはもちろん

意外にも知られていないレアな作品を多く収録した「人生編」もとても勉強になります。

シューベルトの一人称で書かれたライナーノーツも最高で、ひとつの作曲家論として

非常にエキサイティングだと思いました。

今日はこのCDの中から何曲かご紹介するとともに、往年のシューベルトの名手にして

アカデミーの破壊児、フリードリヒ・グルダについて、そして話題のオペラ

ペーター・コンヴィチュニーの「アイーダ」について、熱く語ってみようと思います。

小田島

2008/04/17

ルネ・マルタンのレーベル「MIRARE」

Couv20mir04520schubert2072dpi ラ・フォル・ジュルネのアーティスティック・ディレクター、ルネ・マルタンのレーベル、MIRARE(ミラーレ)をご紹介します。今日はトリニダート・ドバコ系カナダ人の指揮者クワメ・ライアンとボルドー・アキテーヌ管弦楽団によるシューベルトの交響曲「ザ・グレート」です。もちろん、今回のラ・フォル・ジュルネにも出演する予定です。 

Tabi0028 「パリ1920年代 シュルレアリスムからアールデコまで」(渡辺淳著/丸善ライブラリー)

第一次世界大戦後のパリで生まれた活発な芸術のムーヴメントの全体像を手軽に知る上ではとても便利な本です。音楽についての記述は少なめで、美術と文学と演劇が多めですが、音楽好きにとってはそれがむしろ大変勉強になります。1920年代のパリとは、生身の熱い交友関係が沸騰するようにして文化を生み出したのだということがわかります。

                                                    林田

2008/04/16

バッハのオルガン曲の楽譜新たに発見さる

ヨハン・セバスティアン・バッハが1705年から1710年の間に作曲したとされるオルガン曲「主なる神われらの側にいまさずして」のオリジナル楽譜がドイツで発見されたそうです。クラシック音楽の世界ではいまでもときどきこうして未知の楽譜や貴重な一次資料が発見されますが、こうした事柄は、クラシックがいかに「よみがえり、新たな時代とともに生きる」芸術であるかということを実感させます。

9784480064042 「早わかり世界の文学 パスティーシュ読書術」(清水義範著/ちくま新書)

これは、とても楽しんで読める文学論です。パロディの本質、芸術における模倣についての指摘には強く納得させられました。「私が決める世界10大小説のスローガン」もいいですね。すごい読書家なのに、正直に「罪と罰」は読んだけど「カラマーゾフの兄弟」は読んでない、と書く率直さも好感が持てます。素晴らしい文学賛歌であると同時に、清水さんが心の温かい、優しい人だという印象を受けました。

                                                  林田

2008/04/15

ペーター・コンヴィチュニー

現代を代表する天才演出家と呼ばれるペーター・コンヴィチュニーが週末に「オペラ演出を語る」というトークをドイツ文化会館で行いました。彼の演出する「アイーダ」の上演を前にしたイヴェントでしたが、さすがに啓示に満ちた鋭い話が多く、とても刺激的でした。今日はそのお話を少し。

413 また、番組最初のほうではBBCレコーディングによるLPOライヴで、1981年10月29日ロイヤル・フェスティバルホール録音のテンシュテット指揮ロンドン・フィルによるブルックナーの交響曲第8番(J-LPO-0032)もご紹介します。

「ディアギレフ ロシア・バレエ団とその時代(上・下)」(リチャード・バックス著、鈴木晶訳/リブロポート)

非常に入手困難な上下巻の大作ですが、天才プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフとその周辺の芸術家群像を知るためにはぜひ一読しておきたい名著です。ストラヴィンスキーの作風の変化というものが、ディアギレフのバレエ・コンセプトなしには決してありえなかったこと一つとっても、音楽がいかに音楽以外の要素によって影響されることで成り立っているかということがわかります。それにしても、ピカソのデッサンを気に入らないと言って投げ捨て、ピカソの目の前で踏みつけるとは、さすがディアギレフ、やることが大物です。

                                                   林田

2008/04/14

クラシック花盛り

東京の桜はほぼ散ってしまいましたが(八重桜は元気です)

クラシックの来日公演は、これからますます花盛りシーズンです。

ラ・フォル・ジュルネ本番までシリーズでお届けするシューベルト特集は

今日は晩年の大作「交響曲第九番 ザ・グレイト」をご紹介する予定。

ラトル指揮、ベルリン・フィルの名演奏でお楽しみいただきます。

1825年の旅行で、雄大な自然にインスパイアされて書かれたというこのザ・グレイト、

長さも相当グレイトですが、聴いているうちにシューベルトの内面の葛藤や不安、

ひいては自己破滅的な衝動といったものが感じられる曲です。

既にこの時期には、不治の病におかされた自分の運命を知っていたシューベルト。

周囲に友人たちは多くても、絶対的な孤独の境地にいたんだと思います。

そんな矛盾と苦悩が聴き取れる交響曲です。

セピア・コーナーでは洒落者にしてピアノの錬金術師、私の大好きなあの人

サンソン・フランソワをご紹介する予定です。

小田島

2008/04/11

シューベルトと山と渓谷

シューベルトは生涯独身で、恋した女性たちにはことごとく袖にされてしまった

「失恋大王」であったといいますが、男友達とはいつも良好な友情関係にありました。

親しい芸術家の友人とひと夏を通して旅をすることもあったらしく、

今日ご紹介するピアノソナタ第17番も、バリトン歌手のヨハン・ミヒャエル・フォーグルとともに

出かけた山岳地帯への長旅の中で書かれた作品です。

出発は1825年の5月中旬、フォーゲルの故郷であるシュタイヤーやリンツ(チョコメーカー

の名前にもなってますね)を訪れた後、ザルツカンマーグートの壮大な山岳地帯に出かけ、

湖や滝、城や修道院を訪れ、旧友たちを集めて即興のデュエット・リサイタルを

開いたりしたそうです(楽しそう!!)。

その頃に着想されたのが、かの有名な交響曲グレート、そしてこのピアノソナタ第17番も

手早く書かれました。未完成の作品が多いシューベルトは、たぶんあまり集中力が

なかったのですね・・・一楽章はとても勇壮、しかし第四楽章になると

なんとなく「やっつけ仕事」っぽいムードが漂いだします。

ともあれ、このソナタはとても夏の高揚感と自然のきらめきを感じさせる曲だと

思います。小川、樹木、山や渓谷、というのは、シューベルトが大好きな

モティーフでもありますよね。

ドイツ=オーストリアの壮麗な山を思い浮かべながら、連想をめぐらせつつ

今日のトークをお楽しみいただければと思います^^

セピア de クラシックは、オットー・クレンペラー指揮「真夏の夜の夢」を

ご紹介します。巨匠の振る、かわいい「妖精の歌」をお楽しみくださいませ。

小田島

2008/04/10

ラ・フォル・ジュルネ強化月間

4月がスタートしたと思ったら、もう連休は間近です。ラ・フォル・ジュルネ(熱狂の日音楽祭)の予習に便利なOTTAVAをめざして、今日は「シューベルトとウィーン」絡みの曲をたくさんご紹介します。

Item30763p1 「鉄道趣味がわかる本」(いのうえ こーいち著/枻〔えい〕出版社)

鉄道マニア、鉄道オタク、という呼び方は、若干蔑称が入っているんだそうです。鉄ちゃん、鉄、鉄道好き、という言い方がいいようです。ちなみに鉄道好きでない人のことはこの世界では「非鉄」と呼ぶのも面白い。それにしても「鉄」の道は奥深い世界です。車輛鉄、研究鉄、保存鉄、撮り鉄、録り鉄、旅鉄、海外鉄、収集鉄、制服鉄、コス鉄、廃線鉄、時刻表鉄、駅鉄、駅弁鉄、模型鉄など…。でも、どこかクラシック音楽の世界と似ていますね。隣の惑星みたいだけど、実は結構関係が深いと私は見ています。本書を読んで確信しました。それにしても、鉄道好きの世界って、夢と愛に溢れていますよね。

                                                   林田

2008/04/09

放蕩者のなりゆき

20世紀に書かれたオペラの中でも私の大好きな作品のひとつに、ストラヴィンスキーの「放蕩者のなりゆき」があります。今日はナクソス・ヒストリカルのCDからストラヴィンスキー自身がメトロポリタン・オペラを指揮し、ヒルデ・ギューデンがヒロインのアン・トゥルーラヴ役を歌ったライヴ盤をご紹介します。

344600 「世紀末とベル・エポックの文化 世界史リブレット46」(福井憲彦著/山川出版社)

19世紀末から20世紀初頭にかけてのヨーロッパ文化を考えるとき、ジャンルをこえた総合的な視点が必要なことは言うまでもありません。本書は、非常にコンパクトながらも、この時代を代表する知識人や思想家がどのような役割を果たしたのか、実に要領よく、しかも批評精神をもって、鋭い思考をくぐりぬけた文章によって書かれています。文化・芸術のみならず、科学や産業の分野が時代に及ぼした影響についても適切に論及されています。たとえばダーウィンの「種の起原」が、適者生存・自然淘汰という口実を与えることによって、支配や差別の正当化の根拠としていかに悪用されてきたかについて…。そのまま現代の日本にも当てはまる話が多いのにも驚かされます。ただの教科書的な知識に陥らない、優れた知的な刺激に満ちた一冊となっています。

                                                   林田

2008/04/08

ジスモンチ再び来日決定!

ついにエグベルト・ジスモンチの今夏の再来日が決定しました。今回は東京の夏音楽祭の枠内で、オープニング・コンサート(沼尻竜典指揮東京フィルと共演:7月3日紀尾井ホール)、そしてソロ公演(7月7日浜離宮朝日ホール)が行われます。どちらもOTTAVA主催(東京の夏音楽祭との共催)となります。音楽祭自体のテーマは「森の響き・砂漠の声」というもの。まさにジスモンチのためにあるようなテーマですね。

9784166606221 「ボクたちクラシックつながり」(青柳いづみこ著/文春新書)

「のだめカンタービレ」「ピアノの森」「神童」といったマンガが開いてくれたクラシックの世界の扉。その内側の住人であるピアニスト・著述家の青柳さんが、実際のところどうなの?というあらゆる素朴な疑問に答えてくれています。初見とか譜読みとか絶対音感とか、考えてみればわかったようなわからないような摩訶不思議な出来事ですよね。それを、たとえば初見が苦手なのだめが耳で曲を覚えるといったシーンについて、プロの立場から青柳さんが具体的に解説してくださるわけです。本書は、プロの立場からのこうしたクラシック漫画への共感溢れる素敵なオマージュにもなっています。

                                                   林田

2008/04/07

注目のプリマドンナ

日曜日は、天気もよく体調も元気いっぱいだったので、思い立って

大阪まで行ってきました。目的は、初来日を果たしたソプラノ、パトリシア・プティボンの

初日のリサイタルを聴くためです。会場の大阪ザ・シンフォニーホールで当日券を求め

(一階の最前列のはじを選んでしまいました)、どきどき開演を待つこと数十分・・・。

ブルーのセクシー&シックなドレスで登場したプティボンのパフォーマンスは、

日本のクラシック・ファンにさまざまな「初体験」をもたらしてくれました。

予想はしていたけれど、こんなに「いろいろな」ことをやってくれるとは(@@;)

伸びやかで透明感のあるリリコ・ソプラノは、動物の鳴き声に転じたり

おもちゃの人形の叫びに変化していきます・・・形態模写的なこともやってくれて

「動物園の年寄りラクダ」という歌を歌うときには、本当にラクダのような顔をして(!)

朗々と歌い上げたのです。

記者会見で「日本の歌に興味がある」と言っていたばかりなのに

早速日本古謡の「さくら」も、素晴らしい日本語で歌ってくれました。

芸術性に加えて、人間性の素晴らしさにふるえるコンサートというのは

そうたくさんあるものではありません。パトリシア・プティボン、今後も末永く

応援していきたいプリマドンナです。

今日のセピア de クラシックは、夭折のピアニスト、ディヌ・リパッティが

亡くなる二ヵ月半に行った録音「ブザンソン音楽祭における最後のリサイタル」

の中からお送りします。ベヒシュタインの清冽な響きとともにお楽しみください。

小田島

2008/04/04

今日のレコオド

近所にスタイリッシュ系のインテリアショップ、ideeがオーブンいたしましたので

散歩ついでに品物をチェックしていたら、3階の書籍コーナーである本を見つけました。

随筆家で翻訳家でもあった小沼丹の「小さな手袋/珈琲挽き」というエッセイ集で

みすず書房から出ているものなのですが、活字はすべて旧かなづかい。

内容も、ゆっくりのんびり時間が流れていたころの日本の色々な事柄についてで

「ゐ」とか「ゑ」などといった文字が、懐かしムードをさらに増幅させています。

小沼丹の独特の(ときに小児的な)ユーモアセンスも最高で、すっかりこの本のとりこに。

プチプチノイズの古いクラシックをかけながら、じっくり読みたい一冊です。

どうやら私の意識も、旧かなづかいの時代にトリップしてきているみたいで

パソコンではなく万年筆で原稿を書いてみたい・・・なんか気分にさえなっています。

ともはれ、本日おかけするレコオドはセラフイン指揮「椿姫」のハイラヰト

そして東京レディースシンガアズの「落葉松」他をお楽しみいただく予定です。

四月四日にまつはるお話などもお楽しみくださひ。

小田島

2008/04/03

ピアソラ

570523 今日はナクソスの新譜から「ブエノスアイレスのマリア組曲(邦題:リベルタンゴ)」(8.570523)をご紹介します。先日オペラシティで上演された「若き民衆」のときにアンコールで演奏された「ロコへのバラード」も収録されています。エンリケ・モラタッラのヴォーカルは哀感あふれ胸を打つものがあり、すべてのピアソラ好きを納得させるはずです。しかもピアソラとともに大傑作「ブエノスアイレスのマリア」を作り上げた詩人オラシオ・フェレールも参加。最近のナクソスのレコーディングの中でも快挙と呼ぶべき一作です。

41q85cgkq0l 「大作曲家 モンテヴェルディ」(ヴルフ・コーノルト著、津上智実訳/音楽之友社)

バッハよりもさらに100年も前、イタリアに生きた音楽の巨匠モンテヴェルディの作品が、いまクラシック音楽の世界ではますます重要性を増し、人気も高まっています。そんなモンテヴェルディがどんな生涯を送ったかがわかる本です。モンテヴェルディの手紙は120通以上残されているそうですが、その訳がかなり多く引用されており、それを読むだけでもモンテヴェルディの人柄が良く伝わってきます。給料を払ってもらえなかったり、追いはぎに遭ったり、なかなか苦労した人なのですね。面白かったです。なお本書はやや入手が難しいようです。

                                                    林田

2008/04/02

ジョーン・タワー

559328 以前から気になっていたアルバムを今日は紹介します。1938年生まれのアメリカの女性作曲家ジョーン・タワーの管弦楽曲集「メイド・イン・アメリカ」(ナクソス 8.559328)です。その巨大なエネルギーの奔流は衝撃的で、非常に演奏効果の高い作品です。これを聴くとアメリカのオーケストラ界を彼女の作品が席巻しているのがなぜなのか、わかる気がします。米グラミー賞3部門受賞作品。

「人と思想 トーマス・マン」(村田經和著/清水書院)

第二次世界大戦中にナチスによりドイツを追われアメリカにいたトーマス・マンは、自分こそドイツ文化を代表する者と述べています。この自負の源に本書は迫るため、ドイツとは何かというテーマに紙数を割いています。ゲーテ、シラー、ワーグナー、ニーチェ、ショーペンハウアーなどから強い影響を受け、音楽とも深い関係を持つ、このドイツの文豪について知ることは、クラシック音楽をより深く味わうためにも、よきヒントを与えてくれると思います。また、日本の受容史についても触れられていますが、これも大変興味深いもので、三島由紀夫の文学にいかに影響を与えているかが指摘されています。あすのない世界を描くことが文学だと言った三島の言葉の引用は、文学好きにとって等しく刺激的であるはずです。

                                                   林田

2008/04/01

カール・ジェンキンス

Tocp67887 イギリスの作曲家カール・ジェンキンスをご存知でしょうか。元ソフト・マシーンのメンバーであり、アディエマスの作曲家としても有名ですが、母国イギリスでは、むしろ押しも押されぬ現代のクラシック音楽の作曲家として、ロンドン交響楽団などから委嘱を受け、国民的オペラ歌手のキリ・テ・カナワとジョイント・アルバムを出すなど、大変なステイタスと人気を誇っています。彼の音楽の本質はとてもクロスオーバーなもので、ケルト、中近東や日本の文化からも深い影響を受けています。今日は2005年に発表された彼の代表作「レクイエム」(EMI TOCP67887)からご紹介します。

Book555 「マーラー 交響曲のすべて」(コンスタンティン・フローロス著、前島良雄、前島真理訳/藤原書店)

1930年ギリシャ生まれの音楽学者フローロスの大作。マーラーの10の交響曲を愛する人にとっては、その1曲1曲についての詳細な解説が施されているのですが、これが実に面白いのです。楽曲分析の本であるにも関わらず(だからこそ、というべきでしょうか)、めくるめくようなエピソード、作曲家の言葉はもちろんのこと、アルマやワルターやメンゲルベルクらの言葉も豊富に盛り込まれているのです。これは実に興味深い読み物です。

                                                   林田

profile

林田直樹

 音楽之友社に13年間在職、「音楽之友」「レコード芸術」などの編集に携わり、「グランドオペラ」の創刊にもかかわる。現在は、フリーのクラシック評論家として活躍。著書に「クラシック新定番100人100曲」(アスキー新書)など。 その他多くの新聞・雑誌・CDライナーノート・公演プログラムやAmazon.co.jpの音楽コラム等にも寄稿。

小田島久恵

 高校時代より洋楽雑誌「ロッキング・オン」に投稿ライターとしてロック評論を執筆、1991年から同誌に編集としてかかわる。2001年からクラシック批評を積極的に執筆開始。最近では、クラシック以外にも様々なジャンルも取り扱い、情報誌やファッション誌でも書評・コラム・エッセイなどを執筆。

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