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2008年1月

2008/01/31

シューベルトの誕生日に思う

今年はラ・フォル・ジュルネのテーマになることもあり、シューベルトに一層の注目が集まります。ところでシューベルトは生前、自分自身を完成されたプロの作曲家としてはあまり考えていなかったように思われます。それどころか、対位法やフーガなどのテクニックを、まだまだ一から学ばなければと考えていたわけです。ウィーンでは一目おかれる存在だったものの、自己実現の達成感をほとんど感じることのないまま、アマチュア的な感覚のまま亡くなってしまったに違いありません。しかしながら、のちにはシューベルトの作品は、たとえばブラームスのような作曲技法の熟達の士を魅惑してやまなかった。これはとても興味深いことです。

さらに付け加えるなら、ピアノ・ソナタなどでは、たくさんの未完成の作品を放り出したままにしています。それらは完成された作品に較べて遜色ないどころか、むしろ優れている点さえ数多く見受けられるように思います。これも極めて不思議な特徴です。あれほど優れた霊感のこもった作品たちを、なぜ完成させずに無造作に放り出し続けたのか? この奇妙な無頓着さ、執着心のなさは、シューベルトの魅力と何か関係あるかもしれません。

41rraajst0l 「フランシス・プーランク」(アンリ・エル著、村田健司訳/春秋社)

入手困難なようですが、プーランクの音楽の魅力をより深く知るには必携の書です。ヴァレリー、アポリネール、エリュアール、コクトーらにも通じた著者の文学的な素養、そしてプーランクの音楽への熱烈な愛と理解が、本書を単なる評伝のみならず、プーランクへの美しいオマージュへと高めています。

                                                  林田

2008/01/30

ベートーヴェン・オーケストラ・ボン

創立100年を迎えたという知られざる名門オーケストラの来日公演が迫っています。彼らの公式サイトを見てみると、客演にはマズア、テッツラフ、クレーメルといった一級のアーティストが登場しているのと、どうやら声楽曲のレパートリーが充実している、なかなか興味深い活動状況がわかります。日本ではいまひとつ知名度に欠けるかもしれませんが、これはかなりお得かも。2月1日オペラシティの演奏会は今年のコンサートシーンの大穴になるかもしれません。

02375791 「シューマニアーナ」(前田昭雄著/春秋社)

シューマンについて何かを知りたいと思っても、あれほどメジャーな作曲家であるにもかかわらず、参考になる本は意外なくらいに少ないのが現状です。そうしたなかで、新シューマン全集の編集主幹でありウィーン大学名誉教授でもある前田昭雄さんの知恵ほど参考になるものはありません。しかも前田さんのお書きになるものは、音楽について言葉で考えるという行為においても、図抜けたセンスと深い洞察を感じさせるもので、ともに考える喜びを読者に与えてくれます。本書は1970年代にN響「フィルハーモニー」誌に書かれたものから主にとられていますが、いまも実に新鮮な刺激を与えてくれます。余談ですが、前田さんの連載をレコード芸術編集部時代に1年だけですが担当させていただいたのは、本当に勉強になる経験でしたし、楽しい思い出です。ぜひ、ずっと長く活躍されてほしいです。

                                                   林田

2008/01/29

マリインスキー・オペラ

ゲルギエフ率いる、いま世界でもっとも勢いに乗るマリインスキー・オペラが来日中です。うち前半の「ホヴァーンシチナ」「3つのオレンジへの恋」を観てきました。同じロシアものでも、まったく対照的な2本ですね。

211433 「ウィーンっ子によるウィーン音楽案内」(フランツ・エンドラー著、大田美佐子訳/音楽之友社)

奇抜を装うということが一切なく、みんなが一番知りたいウィーンの音楽家や音楽事情について、誰にでもわかりやすく平易に紹介してくれる良書です。ウィーンのインサイダーであり、カラヤンやバーンスタインさえ友人だった大音楽評論家ならではの含蓄ある知識も織り交ぜつつ、俗説への誤解を解き、慎重に事実を推測する態度は、読んでいて大変好感を覚えるものです。音楽の都ウィーンへの最良のガイドと言っていいでしょう。

                                                    林田

2008/01/28

プレイエル、エラール、NYスタインウェイ・・・

先週トークでも少し触れました伊勢丹のサロン・ド・ショコラに、とうとう土曜日に

行ってまいりました。フランス、ベルギー、イタリア、スペイン、日本、NY・・・・

各国の凄腕ショコラティエが売り場に顔を出し、伊勢丹の催事場は万国博覧会のようでした。

フランスMOFショコラティエのフランク・フレソンさんにサインをいただき、スペインの

天才パティシエ、オリオール・バラゲさんにもサインと握手、

コンフィチュリエとして有名なクリスティーヌ・フェルベール女史もいらっしゃいました。

(お忙しそうでサインはもらえず)

うきうきわくわくしながらチョコを購入し、一番のお目当てのリヨンのベルナションの

コーナーに行くと・・・・なんとすべて完売!!!!!!

連日、開店30分で売り切れてしまうのだそうです。ショック!

売り場の熱気を見て感じたことでもあるんですが、日本人というのは

つくづく「オタク」です。スイーツ好きの枠を通り越して、チョコへの過激な

マニア愛を感じてしまった今回のフェア・・・高島屋、三越でも延長戦が行われます。

そちらではマカロンで有名なラデュレ、日本初上陸のマーク・デュコブを

ゲットしてくる予定です。

舌で溶けるチョコの微妙な質感の差異は、さながらピアノの音のよう・・・。

ショパンが愛したプレイエル、今日が誕生日のアルトール・ルービンシュタインが

愛したニューヨヘク・スタインウェイについてもトークしてみたいです。

小田島

2008/01/25

水瓶座

モーツァルトの誕生日が近づいています。その後にはすぐにシューベルトの誕生日。

歴史に名を残すクラシックの作曲家には水瓶座が多いような気が。

モーツァルトの出生のホロスコープ(時間までは出せませんでしたが)は、とても特徴的で

構成している星たちのほとんどがエアー・サイン(風のサイン)です。

感情に溺れず、とても理性的に世界を観察することが特異な人物が浮かび上がってきます。

魚座のショパンや牡牛座のチャイコフスキーと比べると、星そのものの偏り方も違いますし

彼の思想を作っていたものが、非個人的な哲学であったことが理解できます。

同じ水瓶座でも、二月中旬の魚座に近い水瓶座はまた、違うスタイルになるようですが・・・。

漫画家にも水瓶座は多いのですが、彼らはひとつの共通点があるように思います。

今日が誕生日の石ノ森章太郎さん、松本零司さん、そして竹宮惠子さん・・・。

みなSF的な想像力の持ち主なのです。

水瓶座のフューチャリスティックな感性に感服しつつ、今日はコミックの話も

してみたいと思っております。

それにしても外は寒いです。。。。。。(;o;)))))))

小田島

2008/01/24

音楽配信とパッケージCDと

558087 いま音楽業界では、音楽配信の比率が高まり、CDの生産・売上が落ちていますが、そうした中で、リアルパッケージのCDであることの強い意味を感じさせる企画商品も少しずつ出始めています。ナクソスが昨年出した「A-Z of Conductors」(8.558087-90)もその一つです。古今東西の膨大な指揮者についてのデータベースを掲載した分厚いブックレット、そして50人近い指揮者たちのヒストリカル名演を収録しており、指揮芸術についての凝縮されたガイド&リファレンスとなりうるものです。所有している嬉しさ、充実感もかなりのものです。こうした「質感」「実在感」「所有感覚」をくすぐるものが、今後はパッケージとして生き延びていく一つのヒントになると思われます。

「サロメ 永遠の妖女」(山川鴻三著/新潮選書)※絶版

聖書の中に一瞬だけ登場する名もない小娘だったサロメが、ヨーロッパ文化の千数百年を通じてのもっとも息の長いテーマとして成長し変化していくさまを一望の下にとらえた、見事な論考です。私たちが知るリヒャルト・シュトラウスのオペラやオスカー・ワイルドの戯曲はほんの一部に過ぎず、さまざまなサロメがあるということを紹介してくれます。図版は小さいですが、クリムト、ムンク、ビアズレー、ルーベンス、モロー、デューラーらの絵を知ることができますし、文学ではハイネ、マラルメ、フローベール、ワイルド、そして音楽ではR・シュトラウス、フローラン・シュミット、ブラームスにまで触れられている、これは壮大なサロメ論です。

                                                   林田

2008/01/23

幸田浩子さん、林美智子さん

ある広報誌のために、いまの二期会を代表するふたりの女声歌手にインタヴューしてきたところです。コロラトゥーラ・ソプラノとメゾソプラノののデュオ・リサイタル、今後ますます定着していくといいですね。一人が歌うアリアばかりでなく、重唱の味わいは、オペラのよろこびを一層深くするものですから。

903951041 「音盤考現学」(片山杜秀著/アルテスパブリッシング)

「レコード芸術」でもっとも刺激的な連載のひとつが単行本化されました。政治や思想という要素をダイナミックに導入しつつ、折々のクラシック音楽のディスクについて、さまざまな新しい視点を提供してくれます。

                                                    林田

2008/01/22

編集者の気持ち

編集者の気持ち、手に取るようにわかってしまうのです。それが、書き手でありながら元編集者だった身としては、一番つらいところ。とにかく最初の原稿がほしい、そして締め切りまでに何とかしたい。でも、企画もしっかりさせたい。その期待に応えなければと思うのですが、やはりブログを書くようにすいすいとはいきません。あとで「こんなはずでは」とならないようにするためにも、最初の方向性は特に大事ですし。ブログはなんだかんだいって自由気ままでいいわけですからね。…あとはやはり自分にプレッシャーをかけるしかありません。がんばらなくては! 

0944 「大貴族・殺人者・前衛作曲家」(水原冬美著/草思社)

ルネサンス末期の作曲家ドン・カルロ・ジェズアルドの生涯について書かれています。美しい妻が情夫とともに同衾している現場に踏み込んで二人を殺害したという特異なエピソードで知られるジェズアルドの音楽は、その人生と同じく特異な響きを持っており、最近とみに注目されていますが、ジェズアルドに関心を持つ人にとっては、とてもありがたい本です。主題と離れてしまいそうなくらいに周辺の話題も盛りだくさんで、ちょっと難しい印象を与えるかもしれませんが、それも合わせて楽しめると思います。

                                                   林田

2008/01/21

冬の夜長の読書

最近また、新書が面白くて夜通しいろいろ読んでいます。

今日ご紹介するのは、栗山民也さんの「演出家の仕事」(岩波新書)と

山田玲司さんの「非属の才能」(光文社新書)なのですが、どらちもあっという間に

読み終えてしまい、また二度目をパラパラ読んでいます。

栗山さんの、世界の一流の演劇の世界を目の当たりにして

「日本に演劇は可能か?」と苦悩したというエピソード、ヨーロッパの「自分の劇場」

にたいする市民のプライド、そして口コミの威力をつづったあたりには

私の過去の体験にも思い当たるふしがあり、リアリティを持って読めましたし、

山田さんの本は、とにかく全編爽快でたまらない!

「行列なんかに並びたくないあなた。おめでとうございます」という帯のコピーに

飛びついて購入したのですが、このコピーには何か賞を与えたい気分です。

内容も、21世紀のノマド論として評価すべき一冊だと思いました。

今日はそのほかに、トッド・ヘインズ監督の最新映画「アイム・ノット・ゼア」

のご紹介などをする予定です。あのケイト・ブランシェットがボブ・ディランを

演じているスリリングな映画です!!!

おだしま

2008/01/18

人形の夢と目覚め

今週はかなり冷え込みましたが、そんな中、バレエや演劇の公演に

足を運んでおりました。特に一昨日に見た、バーミンガム・ロイヤル・バレエの

「コッペリア」は、いろいろな発見と驚愕の連続でした。とてもユニバーサルな雰囲気の

カンパニーで、精悍な黒人ダンサーが主役級のフランツを演じているのも新鮮でしたし

キャラクテール役の醍醐味を味わわせてくれたコッペリウス博士の演技も最高。

そして、スワニルダ役のプリマの、機械仕掛けの人形のムーヴメントも

はっとするような身体能力の高さでした。

「くるみ割り人形」「ペトルーシュカ」と並ぶ「人形もの」(?)の王道コッペリアですが

人間の情感を込めて踊る以上に、人形的な動きというのは難易度が高いように見えます。

レオ・ドリーブの音楽の愛らしさも、ダンサーたちの熱演と響きあっていました。

火曜日に森下駅のベニサン・ピットで観た、首藤康之さんが出演された「空白に落ちた男」

は、舞踊から切り離され、宙吊りになった「動き」の非日常性を思わせるもので

パントマイムのその先にある大きな可能性に、びっくりしてしまいました。

今日はそのほかに、東京のクラシック・カフェ情報を集めた本「東京クラシック地図」の

ご紹介、そろそろ本格的になってきたショコラ商戦についてトークする予定です。

小田島

2008/01/17

新国立劇場 08-09シーズンラインナップ発表

新国立劇場の08秋-09春シーズンのラインナップが発表されました。ここにそのオペラの部分の要約を記します。

トゥーランドット アッレマンディ指揮、ブロックハウス演出 ※新制作

リゴレット カッレガーリ指揮、ファッシーニ演出

ドン・ジョヴァンニ トリンクス指揮、アサガロフ演出 ※新制作

蝶々夫人 モンタナーロ指揮、栗山民也演出

こうもり ジョエル指揮、ツェドニク演出

ラインの黄金 エッティンガー指揮、ウォーナー演出

ワルキューレ 上に同じ

ムツェンスク郡のマクベス夫人 若杉弘指揮、演出未定 ※新制作

チェネレントラ サイラス指揮、ポネル演出 シラグーザ、カサロヴァ他出演 ※新制作

修善寺物語 若杉弘指揮、坂田藤十郎演出 ※新制作

931573 「遙かなる現前 アルベニス、セヴラック、モンポウ」(ウラディーミル・ジャンケレヴィッチ著、近藤秀樹訳/春秋社)

音楽はともすればイージーな風景描写的に捉えられがちですが、そう単純なものではないということを、本書ほど雄弁に示しているものはありません。たとえばセヴラックの音楽に感じられる「外界」の存在についてジャンケレヴィッチは、内省的で疚しい意識から孤独を解放し、普遍的な生命との交流を可能にする、と述べています。また、セヴラックとムソルグスキーの音楽は、「子供の魂」という点においてもっとも深い絆を持つとも言っています。何という美しい定義、そして音楽に没入した魂の思考でしょう。

                                                  林田

2008/01/16

トスカニーニ命日

今日はイタリア出身の大指揮者アルトゥーロ・トスカニーニ(1867-1957)の命日。彼は指揮者のみならずすべてのジャンルの演奏家に直接間接に影響を与えた巨人です。トスカニーニの存在なくしては、現代のコンサートやオペラのあり方はなかったかもしれません。

4487802289 「冬の旅 24の象徴の森へ」(梅津時比古著、東京書籍)

シューベルトの最高傑作のひとつである、歌曲集「冬の旅」について徹底的に探求した論考です。1曲1曲に宿された象徴を読み解くなかで浮かび上がってくるいろいろな意味には驚愕させられます。ニーチェやハイデガーまで援用して、神の死やニヒリズムの問題にまで触れていますが、確かにこの歌曲集の持っている恐るべき射程は、そこまで届いているに違いありません。ラ・フォル・ジュルネではシューベルトが今年のテーマとなりますが、それを前に実に挑戦的な書が出てきたと思います。

                                                  林田

2008/01/15

トマト

昔、ヨーロッパではトマトは猛毒があると思われており、誰も怖がって食べなかったということです。そのトマトが、シェイクスピア存命時のグローブ座では飛ぶように売れていたとか。その理由は、つまらない芝居をした俳優に投げつけるため! 毒入り果実を俳優に投げつけられるよう、ロビーで売る興行側の根性もたいしたものです。

1526 「世界でいちばん面白い英米文学講義 巨匠たちの知られざる人生」(エリオット・エンゲル著、藤岡啓介訳/草思社)

上記のエピソードをはじめ、面白い話が満載の英米文学入門。文学に接近するには、こうした愉快な逸話を集めた講義(語りおろしです)は最高のガイドですね。チョーサー、シェイクスピアからフィッツジェラルド、ヘミングウェイまで、古典といわれる英米文学が身近になること請け合い。音楽でも文学でも、「人間くささ」というのは、やはり一番のとっかかりになります。

                                                   林田

2008/01/14

寒波と成人の日

全国的に寒波が押し寄せているようです。

実家(盛岡市)の母に電話をしたら、今朝起きたら家の中で零度だったそうです。

玄関の花もパリパリに凍ってしまったとか・・・

地球温暖化が叫ばれて久しいですが、実は2007年から太陽黒点が異常増加して

これから地球は氷河期に入るという話も聞きました。

実家の東北ではヒーターよりまだまだ灯油燃料が主体みたいなので

石油系の値上がりも気になります・・・。東京も、それと比べれば穏やかとはいえ

昨日、今日とだいぶ冷え込んできています。成人の日の晴れ着も、振袖から

冷たい風が入ってきそう・・・。

さてさて、今日はピアニストのレオナルド・ゲルバーのお話、

奇跡のピアニスト、レオン・フィッシャーのお話などをしたいと思っております。

ピアニストの方々は、外出のときは手袋必携ですね。。。。。。

小田島

2008/01/11

バッハ、生きる喜び

先ほどまで日比谷のペニンシュラ・ホテルで、写真家のアントン・コービンの

インタビューをしてきました。ポートレイト写真家として著名な彼が初めてメガホンを

とった映画「コントロール」についての取材でしたが、静かなたたずまいと洞察的な瞳が

とても印象的な人物でした。オランダからロンドンに移住して、この国のユースカルチャーに

骨の髄まで魅せられたアーティスト・・・夭折したロック・スター、イアン・カーティスの

自殺までの日々を描いた「コントロール」は、ロック映画であるにもかかわらず

サイレントのような余韻が残るものでした。

取材では、ロック・スターの早すぎる死についても語ってくれました。

人はどのような瞬間に生きるのをやめようと思ってしまうのか?

日本の自殺者数は、一日90人とも言われています。確かな生命哲学などない現代

せめて「死」についての深い認識があればと思います。

生のとりあえずの中断としての逃避の死を選ぶというのは

未成熟な文化の中での死のように思えてなりません。

今日たくさんかける予定のバッハのピアノ曲やヴァイオリン・ソナタには

言葉にならない死と生についてのメッセージが含まれているようにも感じます。

死についてもっと深く考えるための市民大学のようなものが、必要な時代なのかも知れません。

小田島

2008/01/10

CDショップ

ようやく年明け最初にCDショップに行き、ついつい大量の衝動買い。あーあと思いながらも痛快な気分。そして、もどかしい気分でビニール包装をぐちゃぐちゃと破く快感! 音楽好きならわかりますよね?

今日はビョークが歌うタヴナーの「プレイヤー・オブ・ザ・ハート」も最初のほうでご紹介します。

2081008 「あたらしい教科書 音楽」(小沼純一監修/プチグラパブリッシング)

20世紀をいろいろな次元で総括するのにちょうどいい時期が来ていると思いますが、2006年に出た本書は、これまでにない、すべてのジャンルと地域にバランスを心がけた、大人のための音楽の教科書になっています。偏った知識や趣味を補正し、音楽のこれからを考える指針ともなるでしょう。

                                                  林田

2008/01/09

一瞬

一瞬で一日が終わった感じです。そういう日ってありますよね?

「ポスト・マーラーのシンフォニストたち」(磯田健一郎著/音楽之友社)

少し古い本で恐縮ですが、いまでもとても参考になるので取り上げたいと思います。私が勤めていた音楽之友社でもっとも楽しみにしていたのが、愉快にわかりやすく音楽についての手軽なガイドをしてくれる「ON BOOKS」のシリーズでした。特に本書は名作で、いまは入手がやや困難になっているようですが、交響曲に関心のある人には特におすすめです。マーラーで交響曲は終わったのではなく、さらに新しい交響曲の時代が始まったのだということを教えてくれます。なお、ここではポスト・マーラーのビッグ4はシベリウス、ヴォーン=ウィリアムズ、アイヴズ、ショスタコーヴィチの4人とされています。

                                                   林田

2008/01/08

チェーザレ

今日は最初から本のコーナーのネタを公開しちゃいましょう。

Cezare_01 「チェーザレ 破壊の創造者」(惣領冬実著、原基晶監修/講談社)

久しぶりに本気で読みたい漫画に出くわしました。ルネサンス時代のイタリアを舞台背景とした、チェーザレ・ボルジアを主人公とする伝記です。ダヴィンチやマキャベッリが登場するし、私たちの未知のヨーロッパの奥の間が開かれたような華麗な絵巻となっています。ダンテ学者が監修につき、細部まで史実に沿った完成度の高い作品です。イスラムやユダヤをめぐる深い考察もあり、何度も繰り返し読みたくなる、現代の漫画の新しい次元を切り開いた名作中の名作ではないでしょうか。

                                                    林田

2008/01/07

シネマの誘惑

冬休み中、エスクァイア・マガジン(1/24発売)に掲載するためのヴァレリー・アファナシエフの

インタヴューをまとめていたのですが、十月に行われたこのときのインタヴューが

私の精神に大きな影響を与えていることに、録音を聞きながらつくづく驚きました。

アファナシエフは未来というものに懐疑的で、現代というのは「過去を振り返らざるを

得ない時代」と定義しています。そして、過去を思い出すために「時」が必要なのだと。

あの、フレーズの中で溺死してしまいそうなゆっくりテンポのシューベルトは

そうしたアファナシエフの「時間」に対する感覚が反映されているのでしょう。

そして、ノスタルジーというものの大切さ。彼のさまざまな言葉が脳裏にこびりつき

12月に試写で「ミスター・ロンリー」を観て、「ああ、このことだったのか!」と膝を打ちました。

「恐るべき子供」と呼ばれた鬼才監督ハーモニー・コリンの八年ぶりのこの作品で

登場人物たちの時間は過去で止まっています。マイケル・ジャクソンのそっくりさん、

マリリン・モンローのそっくりさん、チャップリンにリンカーンにシャーリー・テンプルの

そっさくりさん・・・そんな奇妙な人々のファンタジーは、皆「過ぎ去ったよき時代」へと

つながっていて、ラストに描かれるパリの景色も、はっきりと「未来という時代の悲惨さ」を

描き出すものでした。

過去にとらわれるな、未来を見ろ、とはよく言われる言葉ですが、

ノスタルジーというものに癒されなければならない時代が、現代だという確信が私にもあります。

そして、今日ご紹介するもうひとつの映画「アニー・リーボヴィッツ」は、天才的で

独創的なアメリカの写真家のドキュメンタリーです。ここにも、芸術とコミュニケーション

そして人生について考えるためのたくさんのヒントがありました。

時について、人間について、至高の何かについて・・・何か深い認識に達したいという

「渇望」を、映画は刺激してくれます。

それに加えて、女性写真家の系譜などについても今日はお話してみたいです。

おだしま^^

2008/01/04

新春クラシック♪

長いお休みをいただいて、すっかり冬眠してきました。

くるみ、餡、お雑煮といろいろな味のお餅を食べ過ぎて

顔の中にもうひとつ輪郭がかけそうなくらい丸顔になっております。

年末年始には、バラエティ番組を見て過ごすことが多かったのですが

大食いをテーマにした番組が多いのにつくづく驚きました。

歴史上の大食いといえば、アンリ4世、ルイ13世に、驚異的な胃袋を

もっていたというルイ14世。ルイ16世の食事の量も常人の8倍だったといいます。

そして、それらの王の豪華な晩餐は一般公開されることが多く、

大食いが冨と権利の象徴となっていたのです。

九兵衛の高級なお寿司を大食いするタレントたち・・・。

不景気な世の中、見るだけでも豪勢な大食いを疑似体験したいと

一般庶民は思うのでしょうか?

裸芸人、小島よしおについて思うことなども、語ってみたいです。

そして30日に審査員をつとめてきたラフォルジュルネの「ハルモニア祭」の

コンクールの様子(審査員にはあの茂木健一郎先生も)、

少し前にさかのぼりますが、東京文化会館で行われたK-Balletの

「くるみ割り人形」についてもお話する予定です。

おだしま(*^^*)

2008/01/03

思い出したように

8110189 ときどき、ヒストリカルをやりたくなります。今日は、フリッツ・ライナー指揮の「さまよえるオランダ人」の1950年12月30日のメトロポリタン・オペラでのライヴ録音(ナクソス・ヒストリカル 8.110189-90)から、アストリッド・ヴァルナイが歌った“ゼンタのバラード”をご紹介します。彼女の歌ったワーグナーは、いまも不滅の光を放っています。そういえば、レコード・アカデミー賞を受賞したカイルベルト指揮の「ニーベルングの指環」ライヴ録音(テスタメント)も、バイロイトの全盛期を支えた彼女の名唱なしには考えられなかったでしょう。 

9784087203790 「ニッポン・サバイバル」(姜尚中著/集英社新書)

日本も核武装すべきだとか、嫌韓、嫌中みたいなナショナリズム的論調が強まっていく昨今です(クラシック音楽の世界でも、過激でネガティブな言葉が目立つようになっている気がします)。そうした中で、声の大きな者や感情論に圧倒されず、柔軟で冷静な態度を保つことは大切です。そのための処方箋として、とても読みやすい本になっています。

                                                林田

2008/01/02

小惑星が火星に衝突?

NASAのオフィシャルサイトで昨年末に発表されて以来、話題になっているようですが、2007年11月に発見された直径50メートルほどの小惑星「2007WD5」が、75分の1の確率で1月下旬に火星に衝突する可能性があるそうですね。これがもし地球だったらとんでもないパニックになったでしょうが、火星だと「衝突するところを見たい」となるのは現金なものです。こういった天体現象は、人類に直接の影響は及ぼさないとは思いますが、それでも大いなる天体の世界のちょっとした事件は、やはり気になるものです。

110580 「キリスト教と音楽」(金澤正剛著、音楽之友社)

教会や聖書についての基礎知識から、意外な裏話まで、キリスト教とクラシック音楽をめぐる必須の知識がたくさん盛り込まれています。宗教音楽のイロハを知るにもうってつけの、とても楽しい入門書です。

                                                    林田

2008/01/01

謹賀新年

あけましておめでとうございます。

スタジオに来る途中、夕日に輝く雲が電車の窓から見えました。飛行機でも時々見ますが、陽に輝く雲は、とても偉大な感じがします。神の存在を信じられる最も視覚的な現象が、陽に輝く雲ではないかと思います。

今年はどんな年になるか…?

31329277 「ケルト巡り」(河合隼雄著/NHK出版)

唯一神の宗教、キリスト教が根付く前の古いヨーロッパのケルト文化への関心が高まっていますが、この本は、ケルトの紀行文というよりは、ケルトをきっかけに日本を考える、といった趣の本です。そういうスタンスで、未知のものに接していく河合さんの姿勢は好きです。中でも「魔女」を開業している女性へのインタヴューは興味深いものがありました。

                                                    林田

profile

林田直樹

 音楽之友社に13年間在職、「音楽之友」「レコード芸術」などの編集に携わり、「グランドオペラ」の創刊にもかかわる。現在は、フリーのクラシック評論家として活躍。著書に「クラシック新定番100人100曲」(アスキー新書)など。 その他多くの新聞・雑誌・CDライナーノート・公演プログラムやAmazon.co.jpの音楽コラム等にも寄稿。

小田島久恵

 高校時代より洋楽雑誌「ロッキング・オン」に投稿ライターとしてロック評論を執筆、1991年から同誌に編集としてかかわる。2001年からクラシック批評を積極的に執筆開始。最近では、クラシック以外にも様々なジャンルも取り扱い、情報誌やファッション誌でも書評・コラム・エッセイなどを執筆。

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